防波堤の中で その4

日が昇って明るくなってきました。
周囲に出漁する船のエンジン音
自転車のブレーキ音
自動車の行き交う音
音と光が世界に戻ってくると記憶の洪水も退きはじめました。
 


この場所がどこかというと広島県は豊田郡、安浦町の港なのです。
戦時中に建造されたコンクリート船が防波堤として残されていると聞いてやってきたのです。

防波堤として利用される事になった船の名前は第一武智丸と第二武智丸といいます。
 

港の端っこに町の観光協会が設置した説明板があります。

コンクリートで船を作って浮かべるなんて荒唐無稽のように思えるかもしれませんが
先の戦争の前から欧州では資材不足を補うべく建設されていたそうです。

写真を撮りつづけていると自転車に乗ったおじさんが私に声をかけてきました。

「何撮ってるの?」
「コンクリート船です。凄い物があるんですね。」
「見に来る人はいるけどこんなに朝早くからとは熱心だね。」
「早く着きすぎちゃったんですよ。」
「今わしらが立ってるここは最近埋め立てて作ったところでね。
それまで武智丸は岸と繋がって無かったんだ。」

来る前に航空写真で現地の地形をチェックしました。
確かにこのおじさんの言う通り、武智丸は陸地から
少し離れて座礁したように縦に並べられていました。

「まぁ、折角来たんだからゆっくり見ていきなさい。」

そういうと、おじさんはドラム缶に薪をくべて自分の船の方に行きました。


港の端を締め切るフェンスに扉があります。
以前は鍵がかけられていたのかもしれません。
でも私が到着した時にはすでにこの状態で開いていました。


朝一番、釣りをする方がたくさん来るのではと思ったので
早朝から潜り込んでいたのですが誰も来ませんでした。


朝の漁港は少しずつ起き出して
何隻かの漁船が海に出て行きました。

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