防波堤の中で その2


空が見えています。
コンクリート柱の間で足元に茂る草。
痛んだコンクリートがかもし出す独特の空気です。
なまじ、音がしないだけに必要の無い焦燥感だけが増します。


冷たいコンクリートの間で早朝にじっと寒さを堪えて蹲っていると
頭に浮かんでくる映像がありました。

それは子供の頃、遊んだ場所でした。

家から数km離れた場所に広大な造成地が在りました。
宅地開発の為に切り開かれた場所でした。
区画整備され道路だけは先に通っていたのですが
平坦に均された宅地の殆どは進出してきたススキと雑草と
クローバーで覆われていました。

そんな広大な造成地の中でも周囲より高い場所に
何十ものコンクリートの建物が立ち並んでいました。

5階建ての集合住宅です。
建設中でコンクリート部分しかなくて全てががらんどうでした。

遊びに訪れるといっても草が生い茂っている造成地で球技は難しく
訪れる子供はみんな建物への侵入が目的でした。
もちろん立ち入り禁止のバリケードはありました。
車の進入を伏せぐバリケードでした。
子供はそれを潜り抜けて侵入します。


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