防波堤の中で その1

朝の6時にその場所の前を通り過ぎました。
まだ夜明け前で周囲のものははっきり見えません。
手元の地図の距離と走行距離で予想した場所。
地図にはランドマークになりそうな建物を示す文字もありますが
現地に着いて見回してもそのランドマークがあまりにも
地味で見つからないということは良くある事です。

行き過ぎて引き返しました。

そして戻ってきて、駐車場にウィンカーを二度瞬かせて進入。
入ると同時にヘッドライトを消しました。
大型車の後ろにゆっくり進み、縦列駐車。
エンジンストップ。
周辺に止まっている車の窓ガラスと排気ガスを確認します。
ここに車を停めても良いのか。
咎める人はいないかと。

周囲に人の姿がありません。
車を降ります。



貝殻が数珠繋ぎにされて高く積まれています。
その横を目標物に向かって歩きます。

フェンスの扉は開いていました。
道は誰でも通れる様にしてあります。

 

有名 観光地ではないかも知れません。
観光資源になると思うのですが。


波が打ち寄せると思っていた場所でしたが水面は静かでした。

指先があっという間に冷えていきます。
カメラを出してモードを切り替えました。
使いたくない高感度モード。
でもこの時間に撮るにはこれしかないようです。


どうしてこんなに暗いのに日の上がるのを待たないのかというと
日が高くなれば人が来るからというだけの事です。
人の入っていない写真を撮りたかっただけなのです。


海の色も空の色もまだ暗い時間です。


冷たいコンクリートの柱が並ぶこの空間。
足元に積もった泥土から草が生え始めています。
そして霜柱が出来ていました。

踏み込むと
ぐしゃりと潰れ
圧力で溶けた水が
周囲の霜柱を浸食していきます。


藍色のコンクリート。
じっと耳をすませても何の音もしません。


外が明るくなるのを待ちます。

まだ人は来ないようです。

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