五代松鉱山 最後の冬 その11

事務所のカレンダーは1981年でとまっていました。
納期なのか、ペンで印が書き込んで在ります。
コンベアの音が消えて20年以上になるわけです。

20年、その場所で居たんですか?
もうすぐこの建物は崩れてしまいますね。
最後までそこで見届けるんですね。
選鉱場からホッパーまで木造の建物がどんどん崩れていっても
鉄骨があまりにも多い湧き水で加速度的に浸食されて崩れていっても
ガラスが形を無くして粉々になっていっても
その造りの頑丈さゆえに、素材の性質ゆえに、埃が積もることだけを
許してこのヘルメットはここに居ます。
事務所の隣の建物はお風呂場でした。

モルタルの壁にスノコ敷き。
温泉街ですがここには流石に温泉はひいていなかった事でしょう。
隣に大きな給湯器がありました。

雪見風呂を楽しむなんて地元の人には考えの及ばないことでしょう。
ここは奈良でも豪雪地帯です。
開け放たれた窓から見えるのは杉ばかりです。

桶と湯かき棒がそのままになっていました。