湯西川ダム 見学 その3


やや小降りになってきたとはいえ雨が降り続く中
到着しました湯西川ダムです。
管理所もぴっかぴか。
できたてほやほや。


天端に向かうと水陸両用バスが来ていた。
お客様の姿は無く何で立ち寄られたのかは分からない。

早く天端に行きたい。
お疲れさまと声をかけてあげたい。


天端がすごく広かった。
ゲートレスだしこれはRCD適用ダムデザインだときゃっきゃしていたら
巡航RCDでも一部施工していますよというお答えが。

おお!
そうだそうだ。
鹿島建設様が誇る巡航RCD工法♪

堤体を作る骨材に湯西川の河床砂礫と川治ダムの堆積土砂を活用したのも素晴らしいポイント。
川治ダムの堆砂を少しでも解消できるって素敵。

これだけの規模の重力式ダムなのに原石山がない!!
 原 石 山 が な い !!
凄い凄い♪

規模がここまで大きくないダムでは原石山がなくて
コンクリートを買って作るところもありますが
湯西川ダムは堤高119.0m、堤体積106万m3です。

この堤体積で
 原 石 山 が な い ♪


下流面をみると竣工して間もないのに
枠工の間にも緑が茂っていてとてもよい感じになっています。


選択取水棟の建屋はでっかいです。


門数22条。
エアロック式ゲートです。
沖縄の羽地以降、尾原でも採用されましたし
エアロック式、今後も増えるといいな。


横っ腹に量水標があります。

非常用洪水吐の越流標高はEL684.0m
常用洪水吐の越流標高はEL666.5m
今立っている天端の標高はEL690.0m


じっと見る先にはEL681.8mのライン。
平成27年9月関東・東北豪雨での最高水位です。


下流側をみるとこんな感じです。
ほんとに緑が茂って綺麗ですね。

バルブから勢いよく水が出ています。
洪水時でない限り常時、補給は行われています。

これは利水のためのバルブで河川維持流量を流す役目のほか
工業用水、水道用水、灌漑用水など下流の河川で取水して使われる分の水を
ダムから補給するために備えられているものです。
最大で30m3/sまで放流できます。

洪水調節(防災操作)の際に擦りつけ操作でも使用されます。

◆ ◆

擦りつけ操作と言う言葉が聞きなれないという方もいらっしゃると思います。

ここでいう擦りつけ操作とは
洪水調節開始初期に下流に急激な水位上昇を引き起こさないよう
あらかじめ定められた量を流入量を上回ることなく段階的に放流量を増やし
流入量=放流量まで持っていく操作です。


T0709の五十里ダムのハイドログラフで見てみます。


これが擦りつけ操作です。
◆ ◆

これは平成25年台風18号(T1318)での湯西川ダムのハイドログラフです。

洪水調節(防災操作)開始初期に放流量が小さい山を作っています。
この部分がバルブ放流。

バルブから放流している量が元々少ない場合は放流量増加に伴い
下流河川の水位が急激に上昇しないように気を使って操作されます。
30m3/sってかなり凄い水量ですので。

バルブでもゲートでもダムから放流する場合は川によって異なりますが
下流の河川水位上昇が“30分30cm”とか“30分50cm”以内に収まるようにという
厳しいルールがあり、このルールを外れると大目玉食らいます。


このT1318では洪水調節開始直後は
水位が届いていないので常用洪水吐から水を吐く事は物理的にできません


なのでバルブで吐き始めて常用洪水吐のEL666.5mに達するまで擦りつけ操作が行われました。
ちなみに流入量が150m3/sを超えるとバルブは全閉されます。
※但し書き操作に移行する際に流入量と放流量を同じにするために
徐々に放流量を増加させる事も擦りつけ操作と言います。
Qin=Qout(流入量=放流量)にする為にじわじわ寄せていく操作。

※この但し書き操作に移行する時の擦りつけ操作はゲートレスダムには存在しません。
ゲートレスはダムにお任せでよいのです。
設計段階できちんと計算されていますから水位が上がれば自然に水は出るし
水位が下がれば放流量は減る。
そして洪水調節中は流入量より多い水が出る事はありません。
物理的に無理なのです。


こちらは常用洪水吐止水ゲートの操作棟です。
洪水期には全開で運用されるのに
何故かきっちり装備されているゲート室。
そして壁の文字には“止水”の文字がない。

「ここは正式には“常用洪水吐止水ゲート”なんです」
「止水ゲート?」
「非洪水期には閉めているんですよ」
「あらっ。全開にするのは洪水期だけなんですか」
「非洪水期には常時満水位のEL684.0mまで水位をあげられるんです」

利水の要素が多い利根川水系のダムならではのお水を大事に大事にする運用。


立派な巻上機が鎮座しています。
扉体重量は11.0tあるそうです。


IHI御謹製です♪


足元の隙間からのぞくと頑丈な扉体が見えていました。

非常用洪水吐のクレスト高まで水位を上げる試験湛水の時には
当然閉められていたこのゲート。
管理所からの遠隔操作ではなく
ゲート真上のここ、機側操作で動かす仕様になっています。