with Dam night 2023 その2

今年のテーマの「導流減勢の美と技の面白探求」。
こんな風に書くと、ライトな内容なのかなと思われるかもしれませんが
とんでもなく難しい応用水理工学の分野なのです。

自分のような頭の悪い者には参考文献を読んでも
ちっともさっぱり数式が理解できない超難解な分野です。


とりあえず、ダムの放流設備について構成要素はこの通り。


取水設備と流入部については昨年の鋼製ゲート編でお話ししています。
今年のテーマはその後の導流部と減勢工についてです。

導流も減勢も動画で見て頂くのが一番わかりやすいのです。

ということで


水資源機構のHPで
ホーム > 様々な取組み > お役立ち情報 > 映像ライブラリ
映像コーナーにおいてダム放流映像を沢山見ることができます。

大山ダムの試験湛水時の側水路の様子など貴重な映像もこちらで見ることができます。


木津川戦隊ゴレンダムの赤・高山ダムのフラッシュ放流の様子です。
日本ダムアワード2019放流賞受賞の美麗放流です。
これは良い減勢ですね。


導流部の王道は直線・等幅です。


王道の直線流下等幅。
今年で竣工から10周年の大滝ダムの試験湛水時の様子です。


これは試験湛水の3日後にやってきた前線性降雨で
もう一回クレスト放流したときの写真です。
凄い水飛沫は上がっていますが綺麗に減勢池の中に水が導かれて
はみ出していません。
はみ出してしまいそうなら壁を高くする必要があります。


その際の減勢池の様子です。


直線流下等幅の導流では
どうしても大きな減勢池が必要になります。
大滝ダムの減勢池も長いし大きいです。
壁も高いです。


幅を変化させるのは漸縮型堤体導流壁が一番わかりやすい事例です。
端から流れた水が壁によってまとめられていきますので
ダムがそんなに高くなくて越流する水も少ないなら
こんな風にさらさらと穏やかな流れで収まります。

しかし堤体が100m超級ともなると話が変わってきて
水の量が増えてエネルギー量も増加して速度も速くなって
かなり複雑な流れを示すようになりますので
採用するなら水理模型実験が必須とよく言われます。


水路を湾曲させているのは堤体上ではなく堤体から離れた所に
スキージャンプ式で作られていることが多いと思います。
これは矢木沢ダムの試験湛水時放流写真。


減勢工は物凄いエネルギーをもつ水を抑え込む大事な大事なパートです。
その仕事っぷりは実際にバルブやゲート放流している様子を見て頂くのが一番分かりやすいと思います。


これは青蓮寺ダムのバルブ放流です。


減勢池内では凄い高速流で水がぐるんぐるんしていますが
こんな風に減勢されて副ダムをさらさら越流。
美しいですね。


大洪水時の放流事例として淀川水系最強の日吉ダムが
平成30年7月前線性降雨と戦った時のクレスト放流写真をお借りしました。


700m3/sの放流で減勢工も水もこのくらい
ぐわっ!! と、盛り上がっています。
でも勢いはちゃんと殺されているんです。


副ダムのすぐ下流の親水広場です。
放流すると水に浸かるので放流時は立ち入り禁止になるところ。

ざざーっざざーっと波が押し寄せているのが見えます。
700m3/sですから。


5日後に訪問した時の写真です。
ちゃんと減勢工がお仕事していました。
波が押し寄せていたように見えましたが
下流広場は芝生もノーダメージだったのです。
素晴らしい。

更に数日後の花火大会も無事に開催されました。
ありがとう日吉ダム♪


お世話になっているIHIインフラシステムの方から頂いた
中筋川ダム洗浄放流の写真です。
本体の段を流れ落ちる水もみごとで芸術作品なのですが
堤趾導流壁の段を流れ落ちる水も全部美しい♪


堤趾導流壁はとても効果的に減勢と導流が行われるのですが
ダム本体が高くなって来るとどうしても導流壁もそれなりの高さが必要になってきます。

その壁を低くすることができる工夫として
シュートブロックを設置する設計が主流になってきています。

壁を低くコンパクトにすることが可能になって来ると
施工が大変(涙)と、工事する方泣かせと評判の
オーバーハングした波返し(デフレクター)の省略だってできるようになります。


横瀬川ダムの堤趾導流壁がまさにこれ。
施工性と機能性で堤趾導流壁を極めた感じ♪


実際に水が流れている時の様子。
志津見ダムではデフレクターは省略されていませんが
シュートブロックが設けられているので堤趾導流壁の内側の
水の流れはこんな風になります。