with Dam Night 2021 その4

工事を進めておられる兵庫県様に詳しい工事の様子をお聞きしてきました。

国土交通省 近畿地方整備局研究発表会において


令和2年度の優秀賞を受賞した
千苅ダムの治水活用について です。
これが一番詳しくて一番わかりやすいのです。


千苅ダムは大正時代に造られた水道用ダムとしては
非常に貯水池が大きいことが特徴の一つにあります。

利水ダムは常に貯められるだけしっかり水をためておくのが本来のお仕事の仕方です。

でも近年の頻発する豪雨災害に対して既存の設備のまま
運用を変更することで治水面で協力を続けてきました。

左側の図がその説明になります。


それがこの洪水期のゲート全開です。

ゲート全開がなぜ?
いや、そもそもゲート見えないんだけど?
と思われるかもしれませんが
千苅ダムのクレストゲートは扉体の上を水が越えていくタイプなので
扉体が下がるのが全開という動作になっています。

ゲートレスクレストの状態に持っていくことで洪水調節に効果を発揮します。

これがどうして洪水調節に効果が出るの?
流入分が全部スルーしていくだけじゃないの?
と思われる方もいるかと思います。

そういう方にはピアにより上流水位の堰上げが起きることを説明しなくては。


これは親水公園の人工河川に在った飛び石ですが
飛び石を橋脚、ゲートピアと考えてください。
上下流の川幅が一定の時
川の中に構造物があると上流の水位は必ず上がります。
縁石と水面の差を見てください。
上流のほうが水位が高いことが分かります。

千苅ダムは17門のクレストゲートがあります。
等間隔でゲートピアが立っています。

つまりゲートを全開にしていてもこのゲートピアがある限り
貯水池側で水位が上がります。

そしてゲートピアの間隔は一定ですが
水深は流入量によって変わってきます。

上の飛び石の写真ですが
これは上流から来る水がそのまま下流に流れている状態です。

上流水位と下流水位がずっと変わっていないことで
この水量、流量であればこの飛び石の隙間で
問題なく流下させられるのだなと分かります。

しかし、これよりもたくさんの水が流れてきた場合
飛び石の上流側で水位が上がっていきます。
ゲートレスダムと同じ状態です。

流入量=放流量から、段々、流入量≧放流量になって
貯水池側で水位が上昇していくプロセスは
流入量をカットしているのです。

つまり洪水調節。


という事で非洪水期はゲートがこの位置。
渇水に備えてしっかりお水を貯めなくては。
この時のゲート上端の高さが今回工事が行われる副堤(放水堰堤)と
同じ高さになります。


水位標高を書き加えるとこうなります。

ダムには貯水池に貯められる限界の水位、設計洪水位というものがあります。
設計洪水位までの水位差が大きくなるということは
そのまま洪水調節容量が大きくなるということです。

なので千苅ダムでは洪水期にゲートを全開にするのです。


普段は見ることができない千苅ダムの右岸にある副堤を貯水池側から俯瞰した写真です。
副堤の端、放水トンネル入口との間にこういう設備が建設中なのです。


図面でいうとここになります。


副堤の写真も紹介されていました。
これで更にイメージがつきやすくなると思います。


現在の運用は洪水期と非洪水期でゲートを全開/全閉で対応するという
シンプルなものです。


副堤に設置されるゲートは二段式のゲートが付きます。


動作はゲートを引き上げるのでなく下げる方式。
この辺りにクレストゲートへのオマージュを感じる♪
いや、機能的にも機械的にもコンパクトで優れていたからですが。

で、クレストゲートを下げるだけでは水は出ませんが
副堤と底層放流設備を使って越流高よりさらに1.0m貯水位を下げることで
治水の効果を発揮してもらうという運用です。

すごいのが

もし、この運用で雨が降らなくて
渇水になりそうになった場合や
非洪水期に水位が回復していなかった場合

“水で不足分補てんします”という計画だということなのです。

大事なものは水そのものなので
お金出すよで済む問題ではないので
水で現物で代替しますという保証はすごい事です。

なんでそんな事が出来るかというと
布引五本松ダムの近くの公園に届いている水は琵琶湖の水
というあたりでお察しください。
阪神水道企業団。

神戸ウォーターはブランド品ですから。
量は少ないのです。