鶴田ダム 見学 その3


右岸にも工事の説明がたくさんありました。
元々はこの下に繋がる道があったようですが工事の為に立ち入り禁止になっています。


「ダム堤体を長持ちさせるために補修工事をしています」と書かれています。

最近は工事内容を専門用語を使わず分かりやすい言葉で書くようになってきていますが
ここでも同じように簡易な表現で描かれていました。
堤体の右岸側のコンクリートが白く新しいのはこのためでした。


どういう工事かというと堤体表面をはつり、新しいコンクリートで覆うというものです。

鶴田ダムに使われているコンクリートはほかのダムのコンクリートに比べると
わりと膨張しやすい癖があるらしく、内部は問題ないのですが
表面は強度的にどうしても脆くなるようです。

長い目で見るとこれは良くないねという事で表面はつり・壁面補修工事がおこわれることになりました。
平成18年7月豪雨とは直接的に関係のない部分の工事のようです。

一段高い場所にある管理所に移動します。
時計を見ると時間ぴったり。
全く余裕なし。

とりあえず気が焦っているので管理所に飛び込みます。


するととても素敵な階段下の枯山水が目に飛び込んできて緊張の糸が切れました。
なんて素敵な長靴置き場(違)。
これはいい。
玄関に並べてスペースをとることなく、水はけの良い場所でもあるし申し分なし。

スリッパに履き替えて階段を上がって
事務所の扉をそーっと開けて

「こんにちはー。ダムカードくださーい」

まずはそれかと。
ダムカードを頂いた後、見学をお願いしていた者ですと名乗りました。


通していただいたのはなんとコントロールルーム!!
グラフィックパネルと流域の降雨量が示されるモニターに操作卓。
機器に囲まれてドキドキしながらこちらでお話を伺いました。


鶴田ダム再開発事業のパンフレット写真には
平成18年7月豪雨時の写真が使われています。

この写真を見ただけでまた涙が・・・。
いかんいかん。
ちゃんとお話をお聞きしなくては。


これが鶴田ダムのある川内川の流域図です。
幹川流路延長137.0km、流域面積は1600km2あります。
熊本県、宮崎県、鹿児島県の3県にまたがっています。

鶴田ダムがあるのは河口から51.0km地点。
川内川のほぼ中央です。

平成18年7月豪雨では川内川流域で
床上浸水1848戸
床下浸水499戸
浸水面積2777ha
という被害が出ました。

被害は流域全体で起きており
鶴田ダムの上流でも大口市、菱刈町、湧水町、えびの市で浸水がありました。


これは現在の鶴田ダムの洪水調節を示した図です。
多段式一定率一定量方式です。
基準になる水位を5段階に分けてあります。
それぞれの水位に達した時に一定率で放流量をアップします。
最大放流量は2400t/sです。


そしてこれが平成18年7月豪雨時の鶴田ダムのハイドログラフと
下流の宮之城地点での水位です。

この豪雨で鶴田ダムは洪水調節容量を使い切り但し書き操作に移行しました。
しかし絶対に流入量を上回る放流をしていない事をこのハイドログラフは教えてくれます。


御説明頂いた内容が完璧に収められているのがこのDVDです。
この中の映像がとにかくすごいんです。
上流の濁流の凄まじさ
そしてここまでできるのかという多段式一定率一定量放流のハイドログラフ
そして但し書き操作時の詳細
鶴田ダムは住民の避難時間を確保するためにここまで凄い事をやったんだ
という事がひしひしと伝わってきます。

「ダムは万能の洪水調節機能を持つ設備では無い」

計画を超える出水がある度に
ダムがあるのになんで洪水が起きるんだという住民の声が上がると聞きます。
それはダムに対する誤解です。
住民の方がそういう理解をしてしまった背景に、今までの説明不足があったのだとしたら
それは早急に改善しダムについての正しい理解を持っていただくことが必要です。

大切なことはダムの仕事を正確に伝えること。

ダムは万能じゃない。
放流したくても下流の河道整備が不十分だったら放流できないこともある
放流したくても下流の住民に被害が想定されたら開けたいだけゲートを開けるわけにはいかない
そして
限界を超えることもあるのだと。


一通り説明を受けた後、堤体見学に出発です。
うきうきわくわく。

監査廊のコンクリートはとても綺麗でぴかぴか。
やっぱりここのコンクリートは外側だけが今後の事を考えると少し問題があるけれど
内部は全然問題ないのだという事が分かります。