立野ダム SWL到達 その2


天端に行くことができるツアーは大人気です。
最初は申込しないでもいいかなーと思っていたのですが
申し込みしておいてよかった。

自由に天端に入れるわけではなくてツアー参加者だけが
行くことができるという事だったので。

もちろん天端に行かなくても下流の展望台や
マルシェが開催されている骨材ビン跡からも望遠でいくらでも見られますので
ツアーが絶対というわけではないと思いますが、南阿蘇鉄道も頑張って
鉄道を運航してくださり、どこからのビューが一番かというと
個人の価値観で意見が分かれそうなところ。

ただ、鉄道に乗ると最高のビューが見えるのは間違いないというのは
SNSにたくさん投稿されている画像や動画を見ていて思いました。


たくさんの人が撮ってくれて記録がたくさん確保されている
という安心感で自分が必死で写真を撮らねばという焦りが
全く起きませんでした。

凄い安心感があったので自分が気になるところばっかり
マニアックな視点で撮っていました。


雨には降られませんでしたが風がすごく冷たくて強い中
ツアーのために参加者集合。
お知り合い集結状態。


天端に行くまでには工事現場を通りますので
ヘルメット着用します。


立野ダム建設のきっかけになった白川の洪水などについての説明です。
少し湖面に張り出した観測用の足場がありました。


ここは、湛水前、工事中にこんな風に見えていたところです。
左上にちょっと写っているのが足場です。
この後、水位が低下すればやはりこのような姿になります。

洪水の後の水位上昇と違って綺麗な水なので
水没している山肌も泥かぶりにはならないでしょう。

洪水期に制限水位まで貯水位低下しているダムで
大洪水と戦った後には洪水の濁水で水位上昇したあおりで
湖岸の木々が泥かぶりで土色コーティングされていることが多いのです。


足場の上から見たお水満々のダム湖です。
ここまで水がたまるような洪水が来ないことをお祈りです。


左岸側の原始林が水没しています。

今見えている対岸の山の木々は阿蘇北向谷原始林と呼ばれています。
国の天然記念物の指定を受けています。

試験湛水が計算に計算しつくされて
完全にコントロールされた状態で実施された背景には
この原始林が関わっています。

どのくらいの期間の水没であれば木は枯れずに
耐えられるのかの調査データをもとに2週間なら
大丈夫であろうという答えが出たので原始林が水没する期間を
その間に収める試験湛水が計画されました。


いよいよ天端に移動です。
工事現場の横を通って移動です。

ここにコロンコロンと並べられているのは現場の柱状節理です。
なんとこのままベンチになる予定♪
説明板が木製の仮組で場所決めされていました。


じーーっと見ていたのがここ。
越流頂の真上に天端橋梁がないので。
下流側にずらして設置されているので。
こうする理由はふわっと頭に浮かびますが
だとしたら…いったいどれだけの洪水を受け止める計画なんだと。

現場でちらっと聞いたところでは
最大で4650m3/s出せる設計らしいです。
すごいなぁ。

立野ダムのゲートレスクレストは8門。
ゲートレスの低水位放流路と中水位放流路が併せて3門。

立野ダム建設のきっかけになった昭和28年6月の洪水ですが
その後にも大きな洪水は来ていて展示資料では
昭和55年の洪水や、平成24年7月13日に菊池川と白川でとんでもない水位になった
平成24年九州北部豪雨がありましたが
1000年に一度といわれる大出水となった平成29年7月5日のパネルはありませんでした。

平成29年九州北部豪雨は“1000年に一度”級の豪雨ではありましたが
線状降水帯が白川ではなく筑後川の真上に発生して
阿蘇にはそんなに降っていなかったからかと思います。


水位標の数字を確認。
EL275.8mというところかな。


天端横に来ての第一印象。

なんでこんなに贅沢な幅に作ってくれたんだ♪
天端幅、素晴らしい♪

なんでも貯水池側と下流側にそれぞれ2.0m幅の歩道を確保した上に
2車線道路を備える設計でとっても贅沢なデザインなのだそうです。
完成したら地域のイベントとか、とても開催しやすそう♪

ツアー参加者、わーーっと下流側ビューを目指して移動。


しかし、後ろに南阿蘇鉄道の列車が通過すれば
みんな鉄道写真を撮るし乗客の皆様に向かって手を振ります。
目いっぱい手を振っていたところ、ダムマイスター仲間の
星野夕陽様が乗車していたようで動画を撮ってもらえていたというオチ。


右岸側のくるるんとなった建物はエレベーター棟だそうです。
立野ダム、右岸側にながーーいグラウト行っていますので。
堤体監査廊への入り口もここ。


天端に踏み込んですぐ、何か気になるものを見つけました。

何か隠してあるよね。これ。

と、気になったのでペロッとめくりましたところ…


ダム諸元銘板でした。

なんで隠してあるの…

あ、
そうだ
たしか
昨日、なんか委員会でダムの名前変わったんだ

立野ダムはどういう経緯か分かりませんが
試験湛水イベントまで行われるくらい知名度上がったこの時点で
「阿蘇立野ダム」に名前が変わったらしいのです。

意味わからない。

多分、みんな立野としか呼ばないと思う。
今後も立野としか呼ばないと思う。

「小石原川ダム」が長すぎて「小石」で略されるのと同じ。


ということでみんなと同じく天端の端っこから越流を撮ります。
やっぱりみんながたくさん撮ってくれているのであまり撮っていませんでした。
人頼みの安心感。
私より上手な人が根性入れてしっかり撮ってくれているから私はいいや。


ここで気になるのはやはりチーズケーキのような副ダムと
下流で工事が進められている九州電力・黒川第一発電所工事現場。


旧・黒川第一発電所建屋も綺麗に除却されました。
新しい建物はコンパクト。
今までの建屋の半分くらいになります。
でも年間発電電力量は今までを上回るのでパワーアップなのです。
ふふふん♪♪


導流壁は内側に段のない堤体導流壁になります。
堤趾導流壁ではありません。
漸縮型堤体導流壁には違いないけど曲線重力式だから
そうなるのが当たり前でわざわざ漸縮と呼ぶことはないかな。

エプロンからの高さもすごいし距離もすごい。
波返しがコンパクトに見えますがこれは、そこそこ大きいはず。


端から端までゲートレスクレストなので
天端は天端橋梁になります。
橋扱いで大津北向谷橋と名前もついていました。
左右岸の地名を並べてあります。


さらさら越流量なので水紋がはっきりしていて美しいです。
ここで注目していたのは縮流と導流壁迄の広々としたスペース。

堤指導流壁ではないので段々が無いけどさらさら越流量なので
縮流もそんなに水の厚みが増していなくて
全方向から見て美しい♪で収まる量。


これがもっと増えていったら全然別の顔になるわけですが。
堤高87.0mという事で、ふわっと比較対象として頭に浮かんだのは志津見でした。


志津見は直線重力式の全面越流頂をもつ国内で唯一のダム。
こんなにすごい越流は他にありませんでした。
志津見で採用されているのは堤趾導流壁です。
ダムの幅いっぱいに堤体を縁取るように設けられた壁の内側には段々があります。
薄ーく越流した水は段々で減勢され、減勢地には波がほとんど生じていません。

漸縮型堤趾導流壁と同じくきゅっと水を絞っていく形状の
立野の導流壁がエプロンからこれだけの幅を持っていることを考えると
その水の厚さたるや、とんでもないレベルであるだろうと
想像して、背筋が百足の大名行列になるなど。


でもふと目を上げては黒川第一発電所現場を撮ってしまう。
天端から見るとほんとに情報量が多くてワクワクしてしまいます。
トレッスル橋と時々列車が通るという事で立野ダム天端は
鉄道ファンにもある意味聖地になりそうな予感。


撤去された水圧鉄管を長らく支えていたサドルも見えました。
これからどんどん、パワーアップして復活するために
工事が進む黒川第一発電所です。


折り返す新しく設けられた道路も美しい。
立野ダム左岸の勾配えげつないくねくね道路とおなじく
大変魅力的な管理道路です。


管理所はもうできていますので次は管理所訪問で
ぜひそこから堤体を愛でたいです。


リムグラウトトンネルではワインの醸造が行われているという事ですが
残念ながら赤ワイン。
赤ワインは苦手。
好んで飲まない。
肉料理でも白でいい派なので
白ワインも作りませんか???


左岸から見るとこんな感じでした。
確かに曲線重力式なんですがあまり曲線を感じません。
あっさり曲線。

重力式アーチのこれでもかと曲がっている高山なんかと比べると
カーブが明らかに緩いせいかと思います。

などと書くと、また早とちりしてしまう人が出るかもしれないです。
曲線重力式ダムと重力式アーチダムは別のものです。

でも、立野ダム工事現場だけしか見ていなくて
勘違いして同じものだと発信している人が少なからずいるようです。

立野ダムはアーチ効果を得られるように設計された曲重力式ダムなので
重力式アーチダムと近似の存在ですが
世にたくさんある曲線重力式ダムはそのように設計されていないので
それらと混同されると困ります。


天端ツアーの最後にはクイズが待っていました。
そのクイズはともかく、参加者のみつはし様と一緒にきゃーっ♪
となったのがこの地質図。

クリアファイルよりこのパネルが欲しかったので
撮影させていただきました。