ダム工学会中部近畿ブロック with Dam☆Night2022

高根第二ダム 公式見学 その2


貯水池に溜まる堆砂を防ぐために設けられる排砂ゲートは
当然ながら湖底に近い位置に設置されます。

このゲートも高根第二ダムの一番深い所にあるゲートになります。

お役目は当然、排砂ですが、低部放流設備としても働きます。
貯水池の水位を下げて設備の点検や更新が必要になるときに
活躍します。
低部放流設備はゲートでなくバルブを設置しているダムの方が多い印象です。
自分が見学してきた範囲の知識でしかありませんが。

しかし、高根第二ダムはこんな立派な大きなゲートを設置しています。

これにはちゃんと理由がありました。
なんとこの排砂ゲートは洪水吐ゲートのお仕事も担っていたのです。
計画最大放流量の一部をこの排砂ゲートが負担している設計だったのです。


排砂路を上流側から下流側に見とおしたところ。
外の光がまぶしいです。

この部分は開渠構造の排砂路になります。
ここは鉄筋も入っているそうです。


傍まで行ってよいという事で油圧シリンダー横までお近づきに♪


壁にあったゲートの銘板です。
呉造船所様の作品です。

“排砂管サービスゲート”とありました。

サービスゲート
聞きなれない単語です。

排砂ゲートのことをこう呼ぶわけでもないので
普段使わないというような意味合いを含んでいるのかなと想像。


貯水池から排砂ゲートまでの管路は川崎重工様の作品でした。


油圧シリンダーの横から見た排砂路です。
放流しているところを想像すると凄くかっこよさそう。
いや、凄い水飛沫で何も見えないかな。


と、大興奮のNo.10ブロックとNo11ブロックの間のホローから
となりの、No.09ブロックとNo10ブロックの間のホローに移動します。


No.09ブロックとNo10ブロックの間のホロー(中空部分)です。
高根第二ダムでいちばん深い、一番大きいホローになります。


長い階段を足を滑らせないように気をつけて降りてきました。


底部に到着です。


真上を見上げると見事な六角錐です。


コンクリートの壁が作り出す大空間
中空重力式ダム以外にこんな形の大空間は
世に造られることがないのでホローに入ると
完全に被写体に支配されてしまって
とりあえずとにかく撮れるだけ撮る状況の興奮状態。
アーチダムでも同じ状況に陥りやすいけれど中空重力式のホローにはかなわない。


ふと横に目をやると、プラムラインが設置されていました。


プラムラインのピアノ線までは綺麗に撮れませんでしたが
岩盤と階段とプラムラインの図。


ここで、見学している愛好家より大興奮になったのは
ダム工学会事務局からご一緒していた専門家の方々。

いくつものダムの設計に携わってきた方も
この岩盤むき出しの中空重力式のホローは感動されたようで
我々素人にはわからないポイントで中部電力の方と大変盛りあがっておられました。


とりあえず、ひたすら撮っていました。
この写真がお気に入り。


見学ルートを引き返し、最初のホローでお勉強です。

中部電力様と東京電力様の火力発電事業&燃料調達・貯蔵他はjera様
送配電事業は中部電力パワーグリッド様
家庭や企業向けの電気やガスは中部電力ミライズ様

水力発電を含む再生可能エネルギーカンパニー様と原子力部門は中部電力様


中部電力様の水力発電所があるエリアはまさに日本の真ん中で
アルプス連なる山岳部を抱えており、水力発電所の保有数は
全部の電力会社様の中でいちばんだと思っていたのですが違いました。
吃驚!二位だそうです。

水系で言うと
大井川、天竜川、矢作川、木曽川(飛騨川と揖斐川と庄内川もここ)
信濃川、富士川、安倍川、豊川、朝明川、淀川
雲出川、櫛田川、宮川、銚子川、神通川、姫川
に発電所があり

県で言うと
三重県、愛知県、岐阜県、静岡県、長野県です。

今回、見学でお世話になっている岐阜水力センターのある岐阜県
では発電所の数は長野県より少ないですが
圧倒的な発電電力量です。木曽川水系素晴らしい。


中部電力様の揚水発電所は
奥矢作第一・奥矢作第二の二段式揚水発電所をはじめ
奥美濃、高根第一、馬瀬川第一、畑薙第一、とたくさんあります。

日中にピークがやってきて夜間に使用電力量が減り
ベースロードで頑張る原子力発電を支える発電のベストミックスで
大きな役割を担っていた揚水発電は原子力発電運転が減少した時期に
太陽光パネルが全国に増えたことにより大変な仕事を任されることになりました。

不安定電源の太陽光の調節が揚水発電の仕事に加わっているのです。

さんさんと日光が降り注げば問答無用で電気をつくるけれど
少し雲がかかって陰っただけで出力は急低下する不安定電源。
雨や雪の日には当然発電しない季節性の問題もある不安定電源。

朝方、まだ太陽光の発電量が少ない時間
夕方、太陽光の発電量が急低下する頃
揚水発電がそれを支えています。
そして昼間に太陽光発電の余剰電気で下池から上池にポンプアップしています。

大変なお仕事。
きめ細やかな需給調整。


などなど、ホロー内シアターでお勉強させていただきました。
いや、ほんとに、この特別感、桁違いに素晴らしい体験でした♪