T1318 その2


今回の台風18号襲来時の天ケ瀬ダムのハイドロを読み解く前に
まず知っておかねばならないのが直下流の塔の島です。
世界遺産だらけのこのエリア。
近代産業遺産である宇治発電所もありますし
素晴らしい観光名所です。

昨年のお盆豪雨の時には、川からの水でなく、山からの水で床下浸水が出たというエリアです。
(↑正式には“平成24年京都府南部地域豪雨災害”です。長いので勝手にお盆豪雨と呼んでます。)
“山からの水”というと土石流でも起きたのかと思ってしまいますが
そうではなく、ピンポイントで物凄い雨が降り続き
山も保水力の限界を超えて降った雨がそのまま地表を走って低い所に流れ下る状態です。
昭和28年の山城大水害の時に南山城村で実際に豪雨に遭遇した方にお話を聞きましたところ
「家は川に近いところではなく高い所にあったが
玄関に並べてあった下駄や草履が全部水に浮かんで流れていった」
というエピソードがありました。
この山城大水害と同じ事がお盆豪雨の時にこの塔の島地区左岸に起きたのです。
お盆豪雨についてご存じない方は宇治市の発表している
「平成24 年8 月13 日・14 日 京都府南部地域豪雨にかかる災害対応及び災害復旧計画について」
をご覧ください。P54に解析(積算雨量)、P55に被害状況写真があります。

お盆の帰省が始まる日に京滋バイパスのトンネルが土砂崩れで通行止めになった
と言えばニュース映像などを覚えておられる方もいらっしゃるかもしれません。
この時に宇治市街は凄まじい災害渋滞が発生し交通がマヒしてしまいました。
至る所で場所で道路が損壊、土砂崩れで通行不能。
黄檗周辺では鉄道も冠水し、弥陀次郎川で破堤。
更に天ケ瀬ダムの直下で宇治川に合流する志津川では
人家が丸ごと流されるという被害も出て近年にない大変な災害でした。
このお盆豪雨は台風や前線で起きたものではなく
局所的短時間降雨で起きたものである事が恐ろしさに輪をかけました。

奈良市内に住んでいる自分はこの夜、サンダーストームで
落雷の音で夜中に目が覚めたというくらいの物凄い雷雨だったのです。

宇治市街にお住まいの方にお聞きしたところ
雷の音が凄まじすぎて室内で電話の音が聞こえないほどだったとか。

気象台の予想では降っても20mm/h程度であろうという事でしたが
瞬く間に雷雲が成長し同じ場所に留まり豪雨をもたらしたのです。
こういう雨は今後増えるかもしれないです。
しかしどれだけ天気予報が進化していても
こういう局所的短時間降雨は予想ができないというのが現状です。

塔の島は早い話が宇治川の中州です。
二つの島で形成され、上流側が塔の島、下流側は橘島で二つの島は橋で繋がっています。


まずはメイン観光ストリートで塔の島へ。


でた。
もろに観光スポット感満開。
有名な喜撰橋。

しかし目の前の観光資源を無視してひたすら川の水位上昇の痕跡ばかり探す。
変な人だなあと思われていたに違いない。


屋形船。
ここで船に揺られながらご飯食べられるらしい。
鵜飼もあるのでほんとに観光地だ観光地だ。


観光資源に無関心で喜撰橋から上流を見る。
石垣護岸が白っぽくなってます。
洪水の汚れです。


塔の島の上流端に来ました。
ここは完全に水に漬かったようです。


親水護岸整備が進められていましたが現在ここは工事個所で
フェンスで仕切られて立入禁止となっています。


地べたはこのように洪水で運ばれてきた細かい細かい砂で覆われ
砂っぽく白っぽくなっています。
これ性質が悪いのですよね・・・。


そして塔の島の上流端まで行かなくても喜撰橋からでも見えるんですが
槇尾山の水位観測所です。
天ケ瀬ダムからホントにすぐの距離。

そして注目はぶつんと切れている道路の端のように見えるところ。
実はこれは川面に降りるための道路ではなく
ここに締め切り堤があった痕跡なのです。
疎通能力を高めるために撤去されたのです。


国土交通省 近畿地方整備局 淀川河川事務所
「塔の島地区河川改修について」

拡大。

塔の島で宇治川は二つに分かれます。
左岸側の細い部分を宇治川本川と別に、塔の川とも呼ぶらしいです。
この塔の川の方が塔の島の右岸側を流れる宇治川本川より
水位が高くなっています。

この締め切り堤が何のためにいつごろ造られたのかは分かりません。
しかし上記の河川改修についての資料の中の写真を見ると
昭和60年代には無かった物のようです。


これは2011年に宇治川ヘリテージで来た時に撮っていた写真。
ここに締め切り堤が写っていました。

これが在りし日の締め切り堤です。

航空写真のデータではまだ見る事ができました。
このように塔の島の左岸側に流れる水を調整していたものです。

水位を高く保つ必要性があって設置された物でしょうか。
単に左岸には商店や宿泊施設も密集していますし屋形船の運航もあり
何より平等院がすぐ横です。
宇治川本川の流れが左岸に来ないように分けたものかもしれません。