T1318 その1 平成25年台風18号襲来時の天ケ瀬ダム

2013/10/30 更新


平成25年9月15日から16日にかけて
近畿地方を襲った台風18号。


新たに設けられた気象庁の特別警報が初めて発令された台風です。
このお知らせポスターには伊勢湾台風の再現イメージが使われています。


気象庁のレーダー画像です。
本体が上陸したのは愛知県豊橋市付近でしたが
引き連れてきた雨域はまさに近畿を直撃でした。

この台風18号が引き起こした災害については
近畿地方整備局 河川部から発表された
平成25年 9月 30日 台風18号災害概要 暫定版 」pdf
をご覧ください。

京都府の大野ダム(今回、日吉ダム、天ケ瀬ダムと同じく異常洪水時防災操作を実施)
電源開発の池原ダムと風屋ダム(発電専用ダムがここまで頑張ってくれた事に感動でダム泣き)
のハイドログラフも公開されていますので必見です。
上野遊水地も頑張りました。
大滝ダムも猿谷ダムも頑張った。
放水路も頑張った。

各地で既往最高水位を観測しました。
琵琶湖への最大流入量は昭和34年の伊勢湾台風の6200t/sに匹敵する6000t/sにも達しています。

現在の淀川水系河川整備基本方針の基準となった過去の大災害として
昭和28年台風13号水害(T5313)があります。
この昭和28年台風13号水害を200年確率へ引き延ばした値が
「48時間で流域平均雨量302mm」という数字です。

今回の台風18号では凄まじい雨で「48時間で流域平均雨量302mm」
を上回るペースで降り続き、河川水位は上昇しました。
48時間でなく24時間でこの計画雨量に匹敵するほどの降雨があった場所もあり
洪水の立ち上がりが過去にないほど急であった事が特徴です。

流域平均雨量についてはリンク先をご覧ください。
平均なので地点雨量よりはどうしても低く出るという点に注意してください。

近畿地方の治水インフラと利水ダムまで持てる力をすべて使ったかという総力戦でした。


桂川では水資源機構の日吉ダムと京都府の大野ダムが
宇治川では天ケ瀬ダムが今回の台風18号で異常洪水時防災操作を行いました。
今までの言い方で言うところの但し書き操作です。

淀川は桂川・宇治川・木津川の三川が合流して大阪に流れ込みます。
桂川では日吉ダム
宇治川では瀬田川洗堰と天ケ瀬ダム
木津川では高山ダム、青蓮寺ダム、室生ダム、比奈知ダム、布目ダムが
それぞれが淀川ダム統合管理事務所の指示の下
素晴らしい洪水調節・防災操作をしてくれました。

国土交通省 近畿地方整備局 淀川ダム統合管理事務所
水資源機構 関西支社
「台風18号豪雨における淀川水系ダム群の治水効果について」
をご覧ください。


これが9月18日に発表された今回の天ケ瀬ダムの仕事っぷりを伝える
ハイエトグラフ&ハイドログラフ(速報)です。

こちらが修正版。洪水量と洪水位最高水位が明記されていて更に分かりやすいのでこちらで説明。
異常洪水時防災操作に移行してクレスト非常用洪水吐ゲートからも放流しました。

今回の出水は各地の河川の水位観測所で既往最大を記録した所が出ました。
にも関わらず被害は限定的であった事は素晴らしい事です。
しかし、あまりの降雨で土砂崩れや溢水、破堤、冠水など被害が出ました。
それらすべてを防ぐことはできませんでしたが
各ダムは持てる力のすべてを使って雨と戦ったのです。

しかし、また一部のTV局が恣意的としか思えない偏向報道をしました。
京都府は嵐山の渡月橋の冠水と日吉ダムの異常洪水時防災操作を
ダムの働きを知らない人が見たら短絡的に結びつけてしまいそうな形で放送したのです。

10年前なら言われっぱなしで報道被害に泣き寝入りだったかもしれません。
しかし近年、普及したtwitterなどの効果は大きく
たくさんの方がダムの働きについて
川の防災情報の公開データ、リアルタイムデータをもとに分析して
嵐山、渡月橋の冠水と日吉ダムの放流が無関係であることを証明してくれたのです。

ダム愛好家として
ダムの仕事が正しく伝わっている事が
そしてたくさんの人が日吉ダムありがとうという言葉を発してくれているのが嬉しくて
 私が仇をとるまでもないや〜
 たくさんの人が仇を取ってくれたよ〜

と、泣きながら嬉しかったのです。

本当はすぐにでもダムに駆けつけて
お疲れ様でしたと堤体をなでなでさすさすしたかったのですが
仕事が運悪く大変忙しく行けずに日が経ち
少し落ち着いた10月になってから天ケ瀬ダムに行ってきました。



昨年のお盆豪雨からずっと天ケ瀬ダムへ行くこの道路は工事中。
信号待ちの時に場所がいいと良い写真も撮れますが
根本的にガードレールが邪魔すぎる。

今回の台風で天ケ瀬ダムのダム湖には流木・流塵が押し寄せました。
ボリュームが凄かったので網場についている船用のゲートが転倒してしまいました。
うー 悲しい。


そして今回、どこまで水位が上がったかを教えてくれるこの汚れ。
EL78.2mまで上がりました。

天ケ瀬ダムのH.W.LはEL78.50m。クレストゲート上端はEL78.783m。
波が来たらゲートの上を水が出てもおかしくないというほどの水位です。
昨年のお盆豪雨(平成24年京都府南部地域豪雨災害)で宇治市街を守るべく
耐えに耐えた時と同じで本当のぎりぎり目いっぱいまで頑張った貯水位。