笹生川ダム見学 その5

笹生川ダムからの帰り道にHisa様が余水吐きトンネルを教えてくれました。


下流の県道から山間に見えていた堤体。


堤体の横に物凄い大きさのトンネルが見えました。

「何ぼほど大きいもんをつくったんや...」

どうして後付でこんなに大きな余水吐きを造らなくてはならなかったのか。
一回目の訪問ではその謎と真相は明らかにされませんでした。
事前勉強無しで訪れたためにちょっと消化不良。


2004年7月の福井豪雨。
福井市街を襲った濁流。
破堤した足羽川。

ニュースを見ながらWebでリアルタイム情報を見ながら
福井県のダムはどうなっているのかとはらはらしていました。
その時に一番気になったのはやはり笹生川ダムでした。

治水ダムじゃなかった
発電と灌漑のダム。
治水能力が低いから造られたのだろうあの巨大な余水吐き。
あそこから流れ出ているなら下流の真名川ダムはどれだけ受け止めて頑張っているんだろう。

水害直後はいけなかった福井県。
年末になってから一日の休みを有効に
ふらりと福井にやってきて真名川ダム管理所を訪問しました。
冬季の常のゲート点検が行われていて業者の方がたくさん出入りする中、紛れて管理所に入りました。

入ってすぐの靴箱の上に新聞記事がパネル展示されていました。


 クリックで大きいのを別ウィンドウで見られます

なぁんてカッコいいんだ!
直轄ダムの真骨頂だよぅぅ!

管理所の靴箱の前で小踊りしながら新聞記事を呼んで感動し
二階に上がって声をかけました。
にこやかな 管理所長様が対応してくださいました。

『各地でダム見学をしております。
今回の福井水害と奥越豪雨についてこのエリアのダムについて勉強中です。
今回の治水効果についての資料を閲覧させていただけないでしょうか。』

とお願いしましたら、すぐに真名川ダムの資料と
今回の福井水害の洪水調節についての資料を下さったのです♪
そこには今回の水害の比較として昭和40年奥越豪雨についての数字もありました。

2004年7月18日の福井豪雨時のデータです。(真名川ダム管理所で頂いた資料より)

九頭竜ダム (計画洪水量270m3/s)
 最大流入量      253m3/s
 最大流入時放流量    0m3/s
 最大ダム放流量      0m3/s

真名川ダム (計画洪水量500m3/s)
 最大流入量     1,033m3/s
 最大流入時放流量     15m3/s
 最大ダム放流量      152m3/s

笹生川ダム (計画洪水量63m3/s)
 最大流入量       400m3/s
 最大流入時放流量    10m3/s
 最大ダム放流量       77m3/s

足羽川の上流に比べて九頭竜ダム上流ではあまり降らなかったということでしたが
それでもこの流入量の凄まじさ。

2004年7月18日の総雨量が300〜400mmに到った足羽川流域と福井市。
笹生川ダムと真名川ダムの上も同量の雨が降り続いていました。
山をひとつ挟んで東側の九頭竜ダムの上流は総雨量が100〜200mmで
笹生川・真名川・ 足羽川流域に比べると少なかったそうです。

笹生川ダムの計画洪水量は63m3/s。治水能力は殆どありません。
でも水をどんどん流しても真名川ダムが受け止めてくれるから大丈夫。
しかしそれでも今回はこれだけ自分にも出来るところを見せて頑張ってくれました。
県の発電・灌漑ダムなんですから充分頑張ったといえると思います。

そして真名川ダムは最大流入量1,033m3/sに対して15m3/sしか出さなかったのです。
最大ダム放流量は下流河川の水位がある程度下がっているときのものですが
いずれも計画範囲内で収まっています。

だから

真名川ダムの下流域では洪水が発生しなかったのです。
ダム湖岸の国道157号は道路が土砂崩れで流出するなど被害が凄かったけれど
下流域への水は食い止めたのです。

そしてダムの無かった足羽川では降った水がそのまま押し寄せ破堤しました。
これほどはっきりとダムがある川とダムのない川での洪水調節効果の差が
明確に現れた例は少ないのではと思えるほどです。