大滝ダム 見学 その2


水位が低いために選択取水塔が全容を見せています。
その時々に応じて下流に放流するために適した水を取水するための設備。

川の濁り
川の水温

ダムができた事でそれらに大きな変化を引き起こさないように運転されます。


天端は真ん中でフェンスで仕切られています。
ゲート部には近づくことができません。

試験湛水が終わり竣工するその日まで
天端はゲートで閉ざされ通行できないのです。


下流側の整備も進みここにあった重機やプラントの気配はもうありません。


堤体も完成しています。

大滝ダムは試験湛水を中断し、上流の地滑り対策工事が進められる中でも
洪水調節を行い、いつでもその役割を全うできる力を持っていることを垣間見せてくれます。


しかし

まだ竣工はしていません。


1973年にこの場所の10km上流に農林水産省の大迫ダムができました。
大迫ダムは灌漑の為のダムで洪水調節の目的は持っていませんでした。

1982年の台風10号で大迫ダムは流入量に応じて放流を行いましたが
あまりにも急激な流入に洪水調節容量を持たないダムは危機に直面しました。

サイレン吹鳴を行い放流を開始しましたが下流で川遊びや釣りに来ていた人が水難に遭遇しました。

これについては財団法人 日本ダム協会ダム便覧に投稿している拙文『1982-2004』をご覧頂きたいと思います。


川上村は伊勢湾台風でも被害を受けました。
大切な村の土地がダムに沈むことを受け入れました。
そしてまたひとつダムができることになりました。

西の大滝、東の八ッ場 という言葉があります。
ダム反対運動で苛烈を極めた場所でもあります。

同じ村に二つ目のダム
灌漑用のダムと洪水調節用のダム

下流の為に

川上村の方が受け入れた選択

大滝ダムはそれに応えなくてはなりません。

しかし大滝の数奇な運命は建設が進み、試験湛水を迎えた後にも試練を与えました。

そんな大滝ダムは
完成するまでそっとしておきたいダムとして自分の中にありました。

堤体は出来ているのだから見学したいという気持ちはありましたが
触れてはいけないほどに
話しかけるのもはばかられるほどに
傷ついているような気がして遠目に見るだけにしていました。