小丸川揚水発電所上部ダム・下部ダム 見学 その3


貯水池の横を通って上流端?にある展望スペースに移動してきました。


ここからは貯水池を見渡すことができます。
お山の天辺に大きな貯水池。
揚水発電の上池の風景。
とても好き。


遠くに見えているこの部分が取水口の制水ゲートです。
この下に今は水の中で見えない深いところに取水口があり
お水を発電所経由で下池との間でやり取りするのです。


堤体の脇の洪水吐水路の越流部です。
上池は集水域も限られていますので滅多に働くことはないはず。


貯水池の説明板です。
現在地の標高は800mを越えています。
常時満水位がEL810.0mです。

左下の貯水池と堤体全体図を見ていると…


「この、かなすみダムというのは副ダムと書いてありますが鞍部ダムですか」
「はい。後で見に行きましょう」
「堤高42.5mで堤頂長140.0mですか。可愛らしいですね」


かなすみダムを展望スペースから見たところです。
尾根の間を塞いでいます。


ここではAFRDの施工プロセスを詳しく書いた説明板がたくさん並んでいました。

情報化施工技術の進化はすごいんです。
施工支援技術であるMG(マシンガイダンス)、MC(マシンコントロール)
3D設計データがあれば今まで熟練のオペレーターの方なしではできなかった
難しい施工もらくちんになったとか。

ただ、ダムの場合はそもそもワンオフ物ですし
普通の道路や造成地を作るのとは全く別の
特殊な材料と技術が必要になってきますので
合理化できるところはしっかり合理化しつつ
熟練の技が必要な部分では惜しみなくその技術を生かすわけですね。


AFRDの表面遮水というのは特殊な構造です。
ただ、アスファルトをぺたーっと敷いているわけではありません。


基礎の上にまず敷くのがトランジション(遮水壁舗設基盤)。
ゾーン型ロックフィルでもロック材とコア材の間に設けられます。
その上にレベリング・マカダム層
その上に下部遮水層
その上に中間排水層
その上に上部遮水層
最後に表面保護層
と、水を確実に貯めるためにこれだけの材料が敷き詰められているのです。


こちらの説明板は取水口と洪水吐と監査廊について書いてくださっています。
湛水後ダムの運用がはじまるとまず見えることはない取水口の写真です。
洪水吐はシンプルで越流長が40.0mであるとのこと。
堤体の底部には監査廊がくるっと設けられているのを図説してくださってます。
くるっと監査廊♪ふふっ。可愛い〜い〜。


展望スペースのすぐ後ろになにやら綺麗に整備された風景が広がっています。
目の前の法面保護は堤体と同じ整形リップラップです。

「ここは元々、谷だったんです」
「え?」
「池を造る際に出た残土をここにあった谷の埋め立てに使いました」
「ふむふむ」
「ただ、土捨場として埋め立てしたのではなくもともと谷がありましたから
その付け替えとなるように水路を設けたんです」
「今ここに見えているお池は…」
「その水路の最下流部に当たります」
「水路っていうよりほんとに元々ここにこんな湖沼があったような雰囲気になっていますが」
「多自然型水路というもので元の谷の姿に近いものにしているんです」
「すごい手間暇っ!!」

環境変化を最小限にするためにここまで手間暇かけるのが今のダム作りなのですね。


多自然型水路の水が貯水池に流れこんでいく時に流塵をなるべく持ち込まないように
目の細かいスクリーンがきちんと設置されています。


スクリーンが設けられているのところはこの橋の下になります。
伯智王子橋という凄い名前がついてました。
由来を聞くのを現地で忘れてしまいましたが。


橋の下には水路が伸びています。
そして水路の横に一段高くなって細い水路が張り巡らされていました。

「この水路はなんですか?」
「小丸川は純揚水発電の上部調整池になります」
「はい。混合揚水じゃなくて純揚水」
「純揚水の水利権として上部調整池は取水しないことになっているんですよ」
「なるほどっ。だからこのお山のてっぺんに降った雨が貯水池に入らないように…」
「水回し水路と言います。調整池の左岸側に水路があって洪水吐のシュートまで続いています。
上流に降った雨は全部調整池を迂回して下流の川に流れていく仕組です」
「あああ思い出しました。東電様の南相木ダムで確認しました。水回し水路」

貯水池の水と貯水池のある場所に降る雨の水で県をまたいでいて水利権が異なる場合や
貯水池内に雨水の浸入を可能な限り抑制したいとき
貯水池周囲をくるっと取り囲む水路を設けて水が混ざらないようにする工夫があることを
八汐ダムや音羽ダム(テーリングダム)で教えてもらったのを思い出しました。

「ただ、大雨も降りますから」
「大雨が来たら水路が細いから吐ききれるか心配ですね」
「“30日流量”というものがあるんですよ」
「 ? 30日 ?」
「一年の流入量を大きい方から数えて30番目の流量のことで
これ以上の流入があった時は調整池内に入れてもよいことになっているんです」
「その分は後で吐くのですか」
「許可貯水量以上貯留しないように出水の末期に下部調整池から放流して調整します」
「ややこしいですね。ちょっとくらい混ざってもいいと思うんですけどー」
「だめです(笑)」

水利権は本当に細かいですね。

さらに上池の上流側は工事の際に環境保全施設として
貴重な植物などを移植して保護するエリアにもなっているのだそうです。
お山のてっぺんで環境に対する心配りがすごいです。