百谷ダム 見学 その5


下流側を眺めます。
減勢池はこれまた可愛い扇型。


そして直下には農地も広がっています。
ほのぼの感いっぱいです。

元々ここにあった河川を大きく拡幅する事なく
河川環境変化を最小限にとどめ
かつ安全に洪水時に水を流す。

その為にまず直下流の川をしっかりと護岸整備します。
次に、決められたこの幅に無理なく放流できる洪水吐をデザインしなくてはなりません。

百谷ダムのクレストは堤体に沿った直線ではなく扇型に上流部にアーチを描いています。

これは決められたスペースの中で直線よりも越流長が稼げることと
越流頂を曲線にする事で、下流への単位幅当りの流量が一定になって
流況が安定するということで採用されたのだそうです。

越流長が長くなると同じ量の水が来たとしても越流時の水深を浅くできるのです。

「堰の越流公式」というものがあります。

流量=C×越流長×越流水深^1.5

で、算出するもので、Cは越流量係数といいます。
Cをどのようにとるかは越流部の形状で異なり
式の名称が変わりますがだいたい1.8〜2.2くらいの間だそうです。

計画された時に流量は決められている訳ですから
越流長が長くなれば越流水深は浅くなるし
越流水深が深くなれば越流長は短くなりますね。

堤長いっぱいの越流部を持つ先日、試験湛水を成功させたばかりの志津見ダム。
これだけの長さがあると6t/sの流入で越流水深は数cm。
減勢池にも静かに流れ落ち、全く波が立っていません。
水が大暴れすることなく減勢されています。
また、越流長を直線化して短くした場合は、その代わりに越流水深が深くなるため、
その分、ダムの高さを高くしなければなりません。

宮崎県の綾北ダム。
これは綾北ダムが経験した既往最大の出水時の写真です。
(あまりにも特殊な状態の写真なので他のダム写真と並べるのにはちょっと無理があるのですが)
クレスト洪水吐の越流長は短いです。
短いと行ってもスタンダードな大きさです。
それでも大量の水が押し寄せるとこのように越流水深は深くなります。

越流長を短くして越流水深を深くするという事は洪水吐が縦に大きくなり
それだけダム自体の高さも高くなります。

大切なのはこの時、綾北ダムのクレストにはまだ余裕があるという事実です。
洪水吐の高さに余裕があるという事はまだ洪水を調節できる力があるという事です。
綾北ダム素晴らしい!! 
もしこの百谷ダムがアーチ型の越流部を採用せずに直線で越流部を作ったとしたら
同じだけの水を流す為には当然ながら、越流部の長さは今よりももっと長くなります。
下流の減勢池に放流をまとめるためにはどうしたらいいのかと考えると
堤趾導流壁や浦山ダムなどで見られるV字型の漸縮導流壁が思い浮かびます。
または堤体下に側水路という考え方もできるかもしれません。

水資源機構の浦山ダムは堤体導流壁が下に行くほど狭まっています。
越流部の長さと減勢工の幅に差があります。
クレスト洪水吐を超えた水が静かに穏やかに減勢工へと集束されています。

しかし漸縮導流壁はぐぐぐっと絞るため、構造上、中央部より導流壁側付近の流量が大きくなり
それに従って導流壁の高さを高くしなくてはならなくなるという宿命を負っています。

この漸縮導流壁という考え方は百谷ダムが竣工した昭和49年には
まだ生まれていませんでした。
堤趾導流壁などで水をまとめたり、側水路でまとめたりすると
下流にはそれなりの深さ、大きさをもつ減勢工・副ダムが必要になります。

堤体の大きさから考えると驚異的な越流長を誇る苫田ダム。
ラビリンス型自由越流式堤頂は堤体をコンパクトに収める事が出来ます。
もちろんそれを支える減勢工と副ダムは必須です。
こうなると施設自体が大きくなり
もともと下流の河川環境に手を入れる部分が大きくなりますし
ダムの高さが高くなると、工事費用が嵩んできます。

そうしないためにはどうすればいいか。

越流長はアーチ型にして稼ぎダムの高さを抑える
越流水深を浅くして水が暴れないようにする
減勢池も扇形にして越流水が穏やかにぶつかって力を打ち消しあい波が立たないようにする
減勢された水がスムーズに流れ出るように絞る

と、計算に計算を重ねて生み出されたと予想されます。

この計算しつくされた感が現場で伝わってきてもう大変。
うはうはです。


うはうはしながらダム湖を見たところ。
バックウォーターのスイセン群落が見えています。
春ダムだな〜。


左岸から見た天端です。
自転車はいいですけど車両はだめですよ。


左岸下流側にスペックを書いた諸元の板が埋め込まれていました。
ちょっと読みづらくなっていますが上流に詳細な説明板があるからよいですね。


左岸から見た百谷ダム。
いいなー
いい顔だなー
凄い個性的
重力式アーチの堤体を重力式の堤体で挟んだみたいなデザインです。
薄っぺらくないのがいいんです。
重力式らしさがないと♪