紀ノ川分水 その2


別の説明板です。
しっかり書いてくださっていますが
一読して理解できない複雑さ。


というのは
この十津川・紀の川総合開発は凄くややこしいのです。


紀の川(奈良県では吉野川と呼びます)の水を奈良県内で取水します。
取水されたので下流の和歌山県に届く分は減ります。
その減る分を奈良県内の十津川に造ったダムの水で補給します。

という考え方。


そして上流部に津風呂ダムや大迫ダムなど
たくさんの水を確保するためにダム建設をして
渇水にならないように開発したのです。

本川にある下渕頭首工から奈良県北部の大和平野への水は
流れが分かりやすいですが、猿谷ダムからの水が西吉野頭首工に行く道筋が
ワープしているような図ですがこの間を担っているのは電源開発様の
発電ルートです。

坂本取水口からとりいれられた水は
導水路トンネルと発電所と貯水池と発電所を経て
西吉野頭首工に届くのです。

導水路の落差を発電に使うという素晴らしい計画。
水の恩恵を無駄なく使うこの思想が素晴らしいです。

猿谷ダムに導水している渓流取水の最上流も
関西電力様の河原樋発電所ですし
エリア全体の発電用に開発された水のルートを
きちんと利用しているのが素敵です。


発電用ダムと発電所からの水のルートを考えながら理解しなくてはならないのが
この猿谷ダムの流域です。


流域面積が洪水時と平水時で異なっている事を詳しく図で説明してくれています。

紫色の部分が猿谷ダムの直接流域です。
水色の部分が河原樋川の間接流域です。
緑色の部分が関西電力・九尾ダムの上流域です。
九尾ダムのある川の名前は熊野川です。

河原樋川も熊野川も新宮川水系の最上流に当たります。


普段の水の流れです。

九尾ダムからの水は長殿発電所を経由して猿谷ダム下流に届きます。
長殿発電所に行く水と別に、九尾ダムが河川維持流量として流す水があります。
川の水が水不足で途切れてしまう瀬切れが起きないように流すのが河川維持流量です。
この河川維持流量は川を下ってそのまま猿谷ダムに入ります。

河原樋川の水は決められた分だけ取水堰を経由して猿谷ダムに入ります。
取水された分以外の水はそのまま猿谷ダムの下流に流れて行きます。

猿谷ダムに集められた水は貯水池上流にある坂本分水トンネルで
西吉野第一発電所、黒渕取水堰堤、西吉野第二発電所、西吉野頭首工を経由して
紀の川に届きます。


関西電力の九尾ダムです。
水利使用標識に新宮川水系熊野川の文字。

滑らか放流がいつも美しい九尾ダムです。

九尾ダムのさらに上流にあるのが川迫ダムです。
コンクリートブロック型枠が布積でなく格子積のせいで
パッと見た時の違和感が凄いダムです。

堆砂が進んでいますがしっかり現役。
更に上流にある弥山発電所の水が届いてます。
とにかくお水が綺麗な川迫ダムです。


流域が洪水時に変化するというのはどういうことかというと

九尾ダムからの水が長殿発電所を経由して猿谷ダム下流に届くのは変わりません。
増水すると九尾ダムのある熊野川からの水が増大し、全て猿谷ダムに入ります。

河原樋川の水は取水を停止しますので全部が猿谷ダムの下流に流れます。

猿谷ダムに集められた水は貯水池上流にある坂本分水トンネルから
取水分は紀の川に届きますが貯水位が上昇し、洪水時操作を必要とする水位に達すれば
ゲートを開けて放流が始まります。

なので平水時の流域は215.18km2なのに洪水時の流域は203.74km2となるわけです。


左岸側から見たところです。
戦後すぐの武骨なデザインで渋いです。


でも気になるのは水叩き。
うう、抜水点検情報とかあったら駆けつけるのになぁ…。


猿谷ダムの貯水池上端に近い坂本地区の吊り橋に移動してきました。
ここから猿谷ダムの水を取水している坂本取水口が良く見えるのです。


ズームで見た坂本取水口です。


ボートで釣りをする人が多いので接近禁止の注意垂れ幕です。
不思議なのは網場がないこと。
上流端の取水口で水は自然とダムの方に流れていくのでいらないということでしょうか。


坂本取水口のある場所は急なワインディングの途中ですが
こんな風に見下ろすこともできます。