紀ノ川分水 その1

2021/8/21 更新


近畿地方整備局の猿谷ダムに来ています。
猿谷ダムに来たらこのベンチに座って写真撮らないと。
年月を重ねても嫌味がない造形のおかげでずっと人気者のおさるベンチ。


猿谷ダムは国土交通省管理なのに利水専用という変わり種のダムです。
国土交通省がかかわる以上、治水が必ず含まれるものなのですが。

ダムカードにも“N”と“P”の文字しかありません。
“主として灌漑用水を補給”で、Nの不特定用水の扱いなのです。


紀伊半島大水害の後、運用変更がありました。
利水ダムですからしっかりお水を貯めることが一番大事な任務。


昭和32年の竣功です。


堤体の中段にあるコンジットゲートから勢いよく水が出ています。
減勢池は緩やかにカーブしています。

このカーブした減勢池に凄いものが潜んでいるのですが
常に水没しているので見えることがないという…。


ダム周辺の説明板が一新されて新しい物になっていました。
とても詳しい内容になっています。


猿谷ダムはこの「十津川・紀の川総合開発事業」の要になるダムとして建設されました。

同じ十津川・紀の川総合開発事業で整備されたダムとして
近畿農政局の大迫ダム(1973年)と津風呂ダム(1962年)があります。

一番最初に出来たのが猿谷ダムです。


堤高は74.0mで堤頂長170.0mですから
すごく良い場所につくられたコンパクトな堤体なのだなと分かります。


流域面積が洪水時と平水時で異なっています。
これが独特。
後で別の説明板の所で詳しく出ていましたのでそちらで書きます。


ダムを上流から見た図です。
クレストゲートが4門、コンジットゲート1門です。


クレストゲートの説明ですが
割と難しい事をさらっと書いていますね。
これを読んですぐ理解できるのは
かなりダムを見ている人ではないかと。


そしてコンジットゲートですが
高圧ラジアルでもなく
堤体内に
ジェットフローゲート!!
堤体内にジェットフローゲート!!
もう吃驚。

この規模だったらゲートでなくバルブでいけたはずなのに
わざわざジェットフローゲート!!

うーむ。
すごい。


標準断面図です。
堤体から副ダムまでがまっすぐ描いてあるので
猿谷ダムの超かっこいい減勢池が全く伝わらない。
残念。

猿谷ダムの工事誌を以前見た時に減勢池の底
水叩き部にすごくかっこいい物があるのを見つけました。


これがその水叩き部の断面図です。
三角が並んでいます。


工事誌の最初の方に出てくる竣工時写真です。

先ほどのクレストゲートの説明にもありましたが
ダムの直下で谷が大きく蛇行しています。
クレストゲートから大量の水を出すと蛇行している部分の
外側、右岸側の山が攻撃斜面になります。

なので水流をコントロールし
流れを川の蛇行に出来るだけ添わせるために
水叩きにこんなにカッコいい導流壁が設けられたのです。

でもいつも姿が見えたためしがないので
余程、減水しないと見られなさそうです。
寂しい。