第8回 Dam Web Ring OFF会

神鉄で行く烏原川のダムめぐり その3

説明板を前にまずは石井ダムの洪水調節についての説明をいただきました。

パンフレットの表紙には試験湛水で目一杯頑張ってサーチャージ直前まで
何とかお水を貯めた時の写真がありました。
(3年かかって試験湛水したけれどサーチャージまで達しませんでしたので
そのまま構造的な問題なしという事で運用開始となった石井ダムです)


パンフレットの中に在った写真です。
ダム上流の住宅街が写っています。

先ほど我々が待ち合わせをしていた鈴蘭台の駅から北
この距離でこんなに風景が変わるものかと驚くほどの住宅街。

この住宅街に降り注ぐ雨は舗装された路面を走りあっという間に川に流れ込みます。


パンフレットを開いて目に飛び込んできたハイドログラフに目が点になりました。

「何 この 立ち上がりの早さ!」

恐ろしいハイドログラフの線。
急激な水位上昇があることを教えてくれるハイドログラフです。

◆ ◆

これは立ヶ畑ダムの下流、烏原川がバス通りのある市街地に到達したあたりの様子です。
護岸整備が進められています。
神戸には親水公園や河原に降りられるように河川整備がなされているところが多いです。


河原に降りられるようにしてあると同時にあちこちに回転灯が設置してありました。

これは兵庫県が整備している増水警報システムです。
上流に降雨があった時に川にいる人達にすぐ知らせる事が出来るよう設置されたものです。


2008年7月28日
神戸市灘区を流れる都賀川で水難事故がありました。
ニュースで流れた都賀川の増水の映像はあまりにもショッキングなものでした。
川で遊んでいた親子があっという間に水に捕らわれたのです。

都賀川は急勾配河川で出水時には8m/sという驚異的な流速が出る川です。

わずか10分で1.3mの水位上昇がありました。
1分間に13cmも水が足元に増え続けたらこれは尋常ではありません。
おかしいと思って川岸に向かう間にも、どんどん水は増えていくのです。
3分で39cmと考えたら大人でもとても逃げ切れません。

都賀川に限らず神戸は山と海に挟まれた土地柄、そこに走る河川は急勾配で
いずれもが急激な増水のリスクを抱えています。
石井ダムのある新湊川(新湊川・石井川・烏原川・天王谷川)流域も同じです。


特に上流に40万都市を抱える烏原川・石井川は
一度まとまった雨が降れば恐ろしいほど短時間に
下流に水が押し寄せます。

その下流の洪水を防ぐために造られたのが石井ダムなのです。

「このダムの役目は洪水調節とレクリエーションです」
「どのくらいお客様が来られるかという事については何度か平日に調査を行っていますが
100人近い方がお越しになっています」

普通、ダムに平日で100人もお客さんは来ません。
流石、市街地に挟まれた石井ダム。
レクリエーションの役目は十分に達成しているようです♪
そして洪水調節は言わずもがな。

流石、神戸市を守る白亜の砦♪
最高です。


兵庫県の担当者の方に石井ダムの詳しい説明を受けてお礼を述べた後
お昼ごはんタイム。

天端にベンチがある石井ダムなので折角だからと
天端ベンチでお昼ごはんを食べ始めるグループ
あまりにも寒いからと堤体下に移動してお昼ごはんを始めるグループ
ぱかっと分かれました。


そして天端の上から下のグループと手を振ってやりとり。
堤体の下流面の途中でご飯が食べられるなんて
こんな事が出来るのは堤体に素敵な通路をつくってくださっている石井ダムだけの素敵な風景。
でも寒いよぅ。


お昼ごはんを食べ終えたら移動です。
お天気さえ良かったらこんな感じで石井ダムを見る事が出来るんですが
当日は曇っていて寒かった。


初秋の頃にはキバナコスモスがこんなに咲いていた遊歩道も寒々しくなり
代わりにもみじが色づいていた当日でした。

遊歩道というか散策路を延々下ります。
烏原川が緩勾配に見えるところには必ず砂防ダムがあり
下水処理場の前後では谷の深さが際立っていました。

とことこ歩いて行くと約40分で立ヶ畑ダムの上流に在る施設に到着します。


大好きな立ヶ畑ダム上流締切堰堤♪
いつものようにこのゲートを愛でている時に
神戸市水道局 奥平野浄水場の方がお越しになりました♪

「お疲れ様です〜。今日はよろしくお願いしまーす」

当日、なんと所長様がお越しになり、直々に説明を受けることができました。

奥平野浄水場の所長様は神戸市水道局の歴史あるダム達とイギリスのダムを研究しておられ
技術者である佐野藤次郎先生の国内での業績も調査して訪問されているという凄い方で
実際に渡英して19世紀の英国のダムを見てこられたそうです(!)。

説明をいただく時の英語の発音が・・ネイティブなんですが。
これも神戸クオリティですか。
なんか世界の違いをそこここに感じるんですが。

佐野藤次郎先生といえば国内唯一のマルティプル5連アーチ・豊稔池の設計者♪


立ヶ畑ダム周辺地図。
現在地はこの地図の左上の川が交差している地点。


立ヶ畑ダム上流施設群。
烏原川からの水は取水堰堤で量を測り
決められた分を立ヶ畑ダムの方へ送っています。

決められた量以上の水と隣の石井川の水は
立ヶ畑ダムには入らず放水路の方に流れていきます。


これが烏原川の水を取水する取水堰堤です。
複雑に水路が組み合わさった施設で説明がないと何が何だか。


こちらが烏原川と石井川の水を流す放水路のポータルです。
ホントに立派な暗渠のポータル。
「門水放」の文字。

所長様の説明によるとこのポータルは
英国のグラスゴーに在る導水路トンネルのポータルとそっくりなんだそうで
お写真を見せて頂くと、ホントにまんまそっくりさんで吃驚しました。

神戸市水道局の堤体3兄弟、布引五本松、立ヶ畑、千苅の各ダムと導水路を設計した
佐野藤次郎の師、バルトンの影響なのですね〜。


この立派な暗渠には当日、青鷺が居座っていました。
お魚もいるようですね。
こちらの暗渠があるので立ヶ畑ダムの下流には水無し川の区間がなく
水が供給されています。

明治時代の建造物なんですが。
この行き届いた配慮に驚きます。