市房ダム 見学 その3


左岸にある管理所です。
今から7月豪雨時の防災操作についてしっかりお話をお聞きします。
気合いいれる!!


管理所の高さから見た堤体はこんな感じです。
水位標がばっちり見える立地。屋根の上にはCCTVカメラ。
防災操作時のライブ映像はこの方向から撮ったものです。

◆ ◆


御説明をくださるのは市房ダム管理所長様です。
COVID-19対策で換気の良い部屋に4人までということで
萩原雅紀様、星野夕陽様、私でお話を伺いました。

球磨川の歴史は水害との戦いの歴史で
郷土史「肥後の風土史」には
古くは869年に大洪水の記録があり
記録に残っているものだけでも過去400年に100回以上
洪水被害が出ている事が載っているそうです。


最初に今回の令和2年7月豪雨を説明するのに見せて頂いたのは
地元新聞に見開きで特集が組まれていた時の紙面です。

流域の各地点雨量と球磨川が何故、洪水が多いかという地理的特性
本川に支川からの流入が多いことなどきちんと書いてくれています。

が、治水効果として「計画が中止された川辺川ダムの計画地より上流の
ダム集水域の雨量は球磨川本川の中・上流部より少なかった」
という文言が突然飛び出してくるのです。

いやまてまてまて
記事のグーラーフー!!
グラフ見てっ!!
数値見てっ!!

川辺川流域、相当、真赤だけど
なんで最上流部の他の所よりは少ないというだけの二地点の
数値を引き合いに出すわけ!?


その観測地点の葉木って、一番降雨がひどかった時、欠測なんだけど
もう一つの観測地点の開持って24〜44mm/hの雨が6時間も続いているんだけど

治水効果についての専門家の意見として
京都大学防災研究所の角教授が
「(川辺川)ダムが完成していれば被害の大幅軽減につながった」
と示唆してくれている後に

京都大学の今本名誉教授が
「川辺川ダム上流の集水域の雨量が比較的少なく、
ダムの治水効果が発揮しやすい降り方だった。
今回の雨だけで球磨川の治水を議論するべきではない」
という言をもって記事を締めくくっているという…。

もっと降っているところがいつくかあるという事で
相当量の雨があったところを少ない扱いして
“川辺川ダム上流の集水域の雨量が比較的少なく”なんて言い切るとか…

20mm/h超の雨が6時間以上続くって事の意味を専門家が知らないはずないので…

今回、人吉での球磨川の最大流量は7900m3/s(推定)でしたが
観測史上最大でしたが
“今回の雨だけで”というのは
既往最大級の雨でもダムによる治水を考えるなと言っているんでしょうか。

今回大変な浸水被害を受けた人吉市街地は
引き堤をしたとしても4600m3/sしか流せないという試算も出ていますが。

河道掘削をいくら頑張っても渡地区の狭窄部はどうにもなりませんが。

もう記事の造りが見え透いていてため息が出ます。


ちなみに過去の出水との比較グラフです。
“今回の雨だけで…”って一体どの雨で考えろと言っているんでしょうか。


新聞記事で顎が落ちそうになった後、管理所の皆様が作成した
正しい資料で心を落ち着かせます。

まず、市房ダムのある球磨川本川の最上流部です。
資料によっては球磨川は
下流・中流・上流・源流で区分けされていて
市房ダムは上流というよりは源流に位置するダムなのです。

今回被害の大きかった人吉市について
人吉市より上流の集水域に占める市房ダムの集水域は14%にすぎません。
“すぎません”とか言ってても157.8km2もありますが。

隣の川辺川では全体の47%です。
ほぼ半分です。
だから川辺川ダムが在るか無いかで人吉市の治水は根本から変わります。

◆ ◆

長く洪水との闘いを続けていた球磨川流域で
治水を担う川辺川ダム建設の計画が持ち上がり
建設に向けての説明が繰り返し行われていた頃に
前の知事が何度も何度も引き合いに出したのが
昭和40年7月洪水でした。


一体どういう意図で何度も何度もこの洪水の時の市房ダムの操作を
引き合いに出してきたのか分かりません。

国と県が市房ダムの操作には全く瑕疵がなく
そもそも本則操作でしのいでおり
但し書き操作(現在でいう異常洪水時防災操作、報道がよく使う単語でいう緊急放流)は
実施していないと繰り返し資料を基に説明しているにも関わらず
水害がダム放流のせいで起きたかのような印象操作があったと
熊本から遠く離れた帝都で耳にしていました。


この完璧な操作のどこに瑕疵があるというのか。


このグラフは昭和40年7月豪雨災害時の流量を時間別で示したものです。
期間は7月2日の18:00から7月3日の18:00です。
赤色が市房ダムの集水域に入ってきた水
その上の藍色は市房ダムの下流で、人吉市までの間の支川からの流入量
一番上の水色が川辺川から来た水です。


前知事自身が全くダム操作を理解しようとしていなかったせいだと思いますが
県職員の仕事を正しく伝えようとも守ろうともせず
まるでダムが放流したから洪水になったというような印象を与える
食い下がりを延々と続けていた事は
建設計画にかかわられた機関から聞いています。

今回の災害後に゛前知事は
“ダムアレルギーが流域の人々にある”と発言していますが
経緯を聞いていると、流域の人をダムアレルギーにしたのは
前知事本人ではないか!!といいいたくなります。

◆ ◆


市房ダムは更に洪水調節能力を高める為に操作規則を改定し
平成30年からは予備放流試行水位を設けて
大きな出水が予測される際には予備放流で貯水位を低下させる運用をしています。

そしてさらに事前放流も行う事になったので大変さが増しています。

治水専用ならともかく発電も灌漑も乗っかっているダムですから
放流したは良いけど水位回復しなかったらどれだけダメージになるか。


これはT2010に備えての事前放流でEL260.0mまで
水位低下させて容量を空けた時とほぼ同じ水位に下げた時の写真です。
事前放流の実施で相当、貯水位がさげられるという事が分かります。

ここまで低くなるとちゃんと水位回復できるかも心配なので
どきどきはらはら水位。


この写真は今回の豪雨でダム湖に押し寄せた流木です。
発災後の有識者会議の資料で50000m3という
とてつもない数字が出ていたので心配していたのですが
実際はその半分以下20000m3だったとの事でホッとしました。

36水害のときの佐久間ダムでも9000m3ですから。


流木は引き揚げられてこんなに綺麗に薪材になりました。
水没して油抜けてるからよく燃える材になっているかと思います。