ダムナイト3 公開動画 「これより 本則操作を離れる」 プロダクションノート的な何か

ハイドログラフで泣いてくれ その3

という事で、
大野ダムの事例を見て感動した後
ハイドログラフとはダムが頑張った記録なんだと気づきました。

私がなぜハイドログラフで泣けると言いだしているかという事は
何とな〜く、理解していただけたかなと思います。


という事で2009年台風18号襲来時の青蓮寺ダムのハイドロ&ハイエトグラフです。

ダムは一つ一つ地形も立地も異なりますし
雨の降り方は毎回同じではありませんから
全部同じにはなりません。
出水の度に個々のダムの過去データと比較するとそのダムの特性がつかめます。

ハイドログラフでは
流入量・ 放流量・ダム貯水位を見るわけですが
もう少し見てどきどきするポイントがあります。


それは流入量の立ち上がりの早さとピークの持続時間です。

立ち上がりが急であるという事はすなわち
ダム湖の水位が急激に増えるという事です。

2004年福井豪雨時の真名川ダムのハイドログラフではこの立ち上がりが凄まじいです。
平均的な降雨では毎分1cm程度の水位上昇ですが
福井豪雨の際は10秒で1cmの水位上昇がありました。

水資源機構や直轄の大きなダムではなくて
小さなダムではこの立ち上がりが物凄いといきなりゲート操作が追いつかなくて
天端越流(over top)に至った事例もあるんです。

ピークの持続時間は純粋にダム湖の貯水容量を使い切るかどうかという事に関わってきます。
大量の降雨が長引けばダム湖は満杯になりどうにもこうにもならなくなってしまった時は
禁断の但し書き放流が行われることになってしまいます。

そしていきなりたくさんの水が入ってきたからと言っても
ゲートをいきなり開けられないのがゲートを持つダムの宿命です。

放流の前には河川敷の巡視もしなくてはなりませんし
サイレン吹鳴で放流を知らせなくてはなりませんし
急激に河川水位を上昇させないために徐々にしか放流できないからです。

放流量を絞って水位上げ過ぎ>>頑張ったのに>>NG
規定通りに操作して(間に合わなくて)水位上げ過ぎ>>仕方ないのに>>NG

ダムの管理と操作ってホントに難しいんです。


そしてこれはゲート放流方式の図です。

ダムによってそれぞれ調整方式、操作規定は異なります。

室生・比奈知・青蓮寺の各ダムは
この図で言うと(b)の一定量調節方式で管理・操作されることになっています。

しかーし


2009年の台風18号の比奈知ダムのハイドログラフで私が吃驚したのが
本来この形で操作しないはずの比奈知が(d)の鍋底調節方式と同じ様な操作をしている!!
という事だったのです。


比奈知ダムの場合、通常の洪水調節であれば
本則操作ではこのような線が出てくるはずなのです。

 比奈知、凄いよぅ
   泣けるよぅ・・・


(d)の鍋底調節方式はバケットカットとか不定率調節方式とも呼ばれます。

ピークの一番雨の凄い所で放流量を思いっきり絞る大技なのですが
これができるダムは国内でもわずかしかありません。
真名川ダムとか下久保ダムとか。

このピークカットが的中すると洪水調節効果絶大なのです!!
下流の市街が水で一番アップアップになっている時間の雨を
ごっそりダムにため込むからです。

昨今の都市部だけではなく山間部でも起きるゲリラ豪雨
前線の長期停滞
台風と前線のコンボ
それぞれのダムで決められた操作規則に基づいて洪水調整を行います。

操作規則にある通常通りの操作で対応できない事態が発生した時に
今回の名張上流3ダムの連携操作や大野ダムの絞り込みのような
本則操作から外れた特殊な操作が行われることがあります。

注意点として
これらの特殊な操作は「但し書き」とは違います
「但し書き」は下流に洪水が起きるかもしれないことまで覚悟して行うものだからです。

本則操作を離れる事と但し書き操作は全く別物です