ダムナイト3 公開動画 「これより 本則操作を離れる」 プロダクションノート的な何か

ハイドログラフで泣いてくれ その2

ハイドログラフとは
観測点での時間経過と水位の変化をいっぺんに見られるグラフです。

洪水調節を行うダムのハイドログラフには
・時間経過
・ダムへの流入量
・ダム貯水位
・放流量
等が記されています。


これは2009年台風18号襲来時の室生ダムのハイドログラフ&ハイエトグラフです。

上半分に時間別の降雨量と累積雨量を示している部分がハイエトグラフ
下の時間・流入量・放流量・水位を示しているのがハイドログラフです。

時間経過とともにどのようにダムが働いたかが解るグラフなのです。


私がハイドログラフに興味を持ったのは2004年の台風23号禍で
これまた本則操作を離れて但し書き操作覚悟の感動的な洪水調節を行った
京都府の大野ダムの活躍を知ってからでした。


建設省が造り、京都府が管理する大野ダム。


2004年台風23号で限界ぎりぎりまで貯め込みました。

私がよく書きこむ「治水祈念」という文言は
この大野ダムのダムサイトにある石碑に書かれているものです。


大野ダムにあるビジターセンターでは
大野ダムの紹介をはじめダムに関する文献がたくさん置いてあります。
そして大野ダムが大活躍した時の新聞記事なども展示されています。


2004年台風23号の新聞記事。

下流で由良川が氾濫し観光バスが道路上であるにも関わらず
氾濫した川の濁流に取り残され乗客がバスの天井に上がって
水が退くのを待ち、耐えました。

この時、大野ダムはダム操作の内規に従えば放流量を増やすべき状況に在ったのです。
でもバスが取り残されている事を知らされた管理所は内規とは異なる操作を行いました。

ここでこの記事を見ただけでも泣けますね。


そしてこういう事もちゃんと記事になっているんです。
ダムだけで治水は出来ない。
そして堤防だけでも治水は出来ない。
森林の保水力も大切ですがそれだけで洪水は防除できません。

これらを組み合わせて総合的な河川改修と管理が大切だという事。


これは大野ダムのビジターセンターで展示している台風23号襲来時のハイドロ&ハイエトグラフです。
赤い線がダムに入ってくる水の量(流入量)
オレンジ色の線がダムから出ていく水の量(放流量)
青い線が水位(ダム貯水位)です。


薄紫色で塗りつぶした部分がダムに貯留した水の量になります。


本来ならこの流入量に対して放流量を増やすのが
大野ダムの内規で定められた操作、『本則操作』です。

しかし、下流で被災している人が居る事を知ったダム管理所が実際に行ったのは放流量の絞り込み。
放流量を示す線が非常になだらかなのが解っていただけますでしょうか。


規則は守らねばならない事は解っている
しかしこのダムは“F”を冠された誇り高きダム
今ここでその力を発揮しないでその役割を全うしたとは言えない
これより 本則操作を離れる!!
人命を優先し最大限の力を出せ!!

これが泣かずに居られようか…(涙)。


結果、大野ダムは京都府より表彰を受ける事となりました。
拍手拍手♪ぱちぱちぱちぱち♪

この洪水調節操作はこの年のダム・堰危機管理業務顕彰表彰で優秀賞を受賞しています。
「大野ダム 洪水調節時における下流域の状況を考慮した操作による下流被害の軽減」
右にちらっと写っているトロフィーがそれです。