日本ダムアワード2022 白川ダム


2022年9月1日に国土交通省東北地方整備局 最上川ダム統合管理事務所から発表になった
前線に伴う出水における白川ダム・長井ダム・寒河江ダムの防災操作(洪水調節)効果について
です。
白川ダムと長井ダムと寒河江ダムの防災操作が説明されています。


最初に紹介されているのが白川ダム。
中央遮水型ロックフィルダムで
堤高は66.0m、総貯水容量は5000万m3です。


何と、特別防災操作を決めてくれています。
降雨のピークで放流量をぐぐっと絞って大量の水をためてくれました。


最上川ダム統合管理事務所の白川ダムのページで紹介されている
洪水調節図です。
一定率一定量方式。

白川ダムの洪水量は200m3/sですので流入量が200m3/sに達するまでは
流入量に合わせて少しずつ放流量を増やしていくステップ放流になります。
200m3/sを超えると流入量に対して一定率で放流量を増やしていき
300m3/sに到達したら、それ以上は放流せず貯留します。


今回の防災操作の発表資料にも一定率一定量の放流量を示す点々が
書かれているのですが小さいと見えにくいのではっきり書いてみました。


本側操作だったらこの青緑に塗った分が該当します。
今回は非常に大きく洪水をカットしています。
なので特別防災操作なのです。

この特別防災操作の理由というのが
ちょっと血の気が引く話なのですが
下流河川での行方不明者捜索のためだったというのです。

白川ダムの約9km下流、支川の小白川との合流点で
小白川に架かっていた県道の大巻橋が落橋し
橋の上を通行していた車も一緒に流される事故が起きていました。

この報を受けて白川ダムでは169.96m3/s放流していたのですが
約半分の81.76m3/sまで絞りました。

線状降水帯であるかどうかでダム管理所は操作を変えるわけではありません。
線状降水帯かどうかを判断をするのは気象庁のお仕事。

ダム管理所はずっとずっと雨域が動くかどうかを見ているのです。
マイコスとかナウキャストとか統一河川情報とかをみて
この後どれだけ雨が降るかを見定めて操作をしているのです。
ゲートレスダムはダムにお任せですけど。

天気の移り変わりとして、偏西風で西からやってきた雨雲が東に抜けていく
台風進路に引っ張られて雨が移動していくといった
雨域の移動が無い線状降水帯。

今回は西から順番に降って雨域が移動するというプロセスはありませんでした。
線状降水帯なので雨雲が居すわったところに延々と雨が塊のように降り続いたのです。


気象庁から19:15に大雨特別警報が
山形県の米沢市、南陽市、高畠町、川西町、長井市、飯豊町
に発表されました。


川の防災情報で市町村境界表示レベルで見るとこの範囲であることがわかりました。


飯豊町は南北に細長い形をしています。
赤線で囲っているのが飯豊町です。
飯豊町の南の方にある白川ダムの集水域では北の方より雨の降り方は弱かったのです。

ものすごい雨が降り続いたのは白川の下流、小白川、萩生川
木地山・長井ダムのある置賜野川流域であったので、これなら絞り込みは可能と判断し
特別防災操作が行われることになりました。

下流で水難事故が発生した為に上流のダム群が
ゲート放流量を絞り込んだ現場に居合わせたことがありますが
空は晴れていて雨域が行き過ぎた後でした。

凄まじい雨域が木地山ダムと長井ダムの野川流域と、白川ダム下流の飯豊町の上にあり
白川ダムの集水域では下流に比べると雨の降りは弱かったからという事でしたが
降雨まっただ中、とんでもない雨が降り続いていて
大雨特別警報が発令されたタイミングとほぼ同じ頃に
この特別防災操作の判断は凄い!としか言いようがないです。

  
水文水質データベースで書き出した8月3日から7日にかけてのハイドログラフになります。
落橋に伴う行方不明者の捜索のために
8月5日以降、利水者の理解と協力を得た上で
ダムからの放流をゼロまで持っていき、捜索活動に協力していた事が表れています。
車はその甲斐あって3日後の8月6日に発見されました。

特別防災操作から後期放流まで
流域にお住まいの方に寄り添うきめ細やかな対応が素晴らしいです。