日本ダムアワード2022 木地山ダム


長井ダムの上流にある木地山ダムです。
今回の豪雨では、ダム仲間と共にハラハラしながら
川の防災情報やライブカメラの映像を見て、応援していました。

木地山ダムは山形県が管理する発電用ダムです。
下流に長井ダムが竣工したことで洪水調節容量を廃止して
「発電」と「流水の正常な機能の維持」をお仕事とするダムになりました。

ホローグラビティダム13人衆の一員でもあります。


木地山ダムのダムカードのこだわり技術には
・流域が急峻
・出水が早い
・ダムの容量が少ない
・ゲート操作には熟練の技が必要
と、なかなか踏み込んだ情報が書かれていて
ハイドログラフで萌える愛好家的には
きゅんきゅん♪して、頑張って〜!!
と、なってしまうポイントだったりします。

総貯水容量は820万m3
流域面積は63km2
ゲートはクレストにラジアルゲート2門です。

川の防災情報で公開されているデータによると
平常時最高水位はEL480.90m
洪水時最高水位はEL481.60m
最低水位はEL464.50m
です。


8月3日18:40のナウキャストとダムの位置になります。
木地山ダムと長井ダムの上にはずっと真っ赤な雨域がありました。


8月3日20:00の防災情報です。
長井ダムの流域平均40mm/hを観測した直後になります。
何時間、居座るんだという雨域。


この時の川の防災情報で見た木地山ダムのハイドログラフになります。

えっ!!
これって
これって過放流になってるじゃない!! 
流入量より放流量の方が上回っているよ…

と、思ってしまった方も少なからずいらっしゃると思います。
これ、仕様なので仕方ないのです。

これ、1時間のデータを最後に数値で出してグラフ化するので
他のダムでも時々見られる現象です。
表記の上で仕方なくこうなっているというか…。


同じ時刻のハイドログラフを拡大してみました。
グラフの形が全然違っています。
流入量がいきなり どーーーん!! と下がっているのは変わりませんけど。

流入量が急激に下がっているのですが
放流量はじりじり下がりになっています。
何故、こうなっているかの理由は
さらに拡大すると見えやすくなります。


最も拡大したハイドログラフがこちら。
10分間隔のデータです。
注目してほしいのは背景にある棒グラフのほうです。
貯水位を示すグラフになります。
木地山ダムの洪水時最高水位はEL481.60m。
ぎりぎりです。
これ以上は上がらないようにシビアに放流量をコントロールしていたのです。

流入量がいきなり減少したとはいえ
ここで放流量を減らすとこのぎりぎりのところまで上がった水位が
さらに上昇してしまうために、敢えて流入量=放流量(Qin=Qout)にしていないのです。

放流量よりも注視されていたのは貯水位だったのでした。


こちらが川の防災情報から提供されていた木地山ダムの観測値のExcelデータです。
貯水位は最高でEL481.85に到達しています。
洪水時最高水位のEL481.60mを8月3日の18:40に超過。
この時の放流量がまだ全然流入量に追いついていないのです。

19:50まで超過したままで、本当にぎりぎりの攻防でした。

木地山ダムは2011年に洪水調節容量を廃止しています。
長井ダムがそれを担う事になっていますので
長井ダム竣工後、木地山ダムには洪水調節方式は設定されていません。

では利水ダムとおなじになるのかな??という事で
建設省 河川局長通達 第178号 「利水ダムの分類」における
T類からW類のダムに当てはめてみましたところ

TからV類のダムには非該当でした。

・貯水容量 870万m3>> 問答無用でT類から除外です。
T類は洪水時にまず貯留ですので巨大貯水池を有していないと話になりません。

・堆砂が進行していない>> U類ではありません
U類は堆砂が進行している古いダムが指定されることが多く
貯水池のバックウォーターの水位上昇に留意して操作を行います。

・ゲート数は2門
・水系最上流のダム
・下流に住家・耕地が開けていない
・計画洪水量が1000m3/s以下である
・空虚容量を持って出水に対処する必要がない>> V類の条件が全部外れています。

という事で、この分類で当てはまるとしたらW類しかないのですが
そもそもこの分類で区分していいのかという根本的な話が不明のままです。

そもそも河川管理者である県の管理ダムである事。
(下流に長井ダムがあるので国管理の境界がどこかにあるかもしれない)
下流に国管理の長井ダムが新設され洪水調節を担う事になっている事。
ゲート操作は一定量、一定率一定量、不特定調節、自然調節のいずれにも該当しない事。

流入量に追随する形で放流量を増やし洪水時最高水位までの範囲で
安全に処理する操作を行う事からTからW類のダムには非該当とすべきか
そしていくらW類だったとしても13条カーブはどこに行った…。

などと疑問が噴出して止まらないので
管理者様にお聞きしたところ

「洪水調節方式はFの容量を廃止しておりゲート操作は
防災操作としての貯留を行わず、貯水位を管理する「洪水処理」である」

というお答えを頂き、吃驚しました。


そうかー
そうなんだー
確かに洪水をゲート放流でカットしていたし
頑張りすぎて洪水時最高水位をちょっと超えちゃったりしたけれど
オーバートッピングしていないし
これだけの流入量を最後まできっちりコントロールしたのは事実。
洪水を処理してる!!


一晩、こんな水位と戦い続けておられたのです。
左岸にある可愛らしい三角屋根のダム管理所で。


翌日、4日朝の木地山ダムライブカメラの様子です。
この時のダム貯水位はEL481.04mです。


管理所前から見た木地山ダムと貯水池です。

あまりにも急激な流入量の増加に放流量を追随させていくのが凄いし
追いついたのも素晴らしい
でも、操作していた方はものすごく怖かっただろうなぁ…。

本当に道路が落ちて孤立してしまったりしても管理所の皆様がご無事でよかった。

本当にとてつもない雨との戦い、お疲れ様でしたとお伝えしたいです。