令和6年 温井ダム 見学 その2


資料室が開く時間になったので中に入って展示写真を確認します。
この写真はとてもとても綺麗だけど欲しい情報が見えない。
温井ダムの試験湛水で最高水位到達は2001年(平成13年)1月28日だったとのこと。


試験湛水時の貯水位グラフです。
途中で雨不足が遅れそうになったりもしましたが
最終的に途中で追い上げがあって予想より2か月早く終了できたそうです。


ダムの模型には最高水位が赤いラインで示されています。
ここまで貯めるのか
ここまで貯めていいのか
と、見ているとひやひやする水位です。


この写真に知りたかった情報がそこそこ入っていました。
ホントにその高さまで貯めたんだなーと。


資料室においてある工事誌にあるダム上流面図です。
ホントに低い位置にある常用洪水吐
絶対オールマイティで使い勝手の良い高さに設置されているツイン波動砲。
信じられない高さまで貯められるクレストゲート
全ての放流設備が機能的で位置も極めている感が半端ないです。


設計洪水位(貯められる限界の水位)はEL383.5m
サーチャージ水位(洪水時最高水位)はEL381.0m
常時満水位(秋~春の満水位)は
洪水規制減水位(夏の満水位)
です。


こちらは下流面図です。
越流頂がEL377.0mとなっています。

多くのダムで採用されているアンダーフローのゲートだったら
この高さは堤体のコンクリートの越流長を示します。

しかし、温井ダムのクレストゲートはドロップゲートです。
オーバーフローのゲートなのです。


クレストゲートの図面です。


クレストゲート越流部を横から見た図になります。
洪水時にゲートは引き上げられます。

なので試験湛水の時に貯水池の水はゲートの上端をさーっと乗り越えて来たわけで
コンクリートの越流部の上に一度落ちるのでそこではねて前に飛ぶんじゃないのかと
水流の形状が写真に撮られるているような形になるのがちょっと不思議だったので
頭をひねっていたのでした。

でも普通のアーチダムのアンダーフローの越流部形状より
傾斜が急なので跳ねないでうまく流れ落ちていくんだろうなと
図面を見てなんとか納得。


そもそもなんでアンダーフローの普通のゲートではなく
オーバーフローのドロップゲートを選んだのかという事について
工事誌にはその点も書かれていました。

工事誌では越流式ローラーゲートと書いてあるところもありますが
それはつまりドロップゲートのことです。

天端は突出物のないフラットな美しい形状に
 → ゲート支柱が必要なローラーゲート× ゲートハウスが飛び出すラジアルゲート×

ゲートレスで目標量を出すには堤頂にゲートレスクレストをずらっと並べなくてはならない
 → 川の幅が狭すぎるのでゲートレスは無理

堤体中央でコンパクトにまとめて放流水が減勢工に収まるようにしなくてはならい
 → オーバーフローのゲートが候補( ドラムゲート フラップゲート ドロップゲート)

ドラムゲートは水位上昇に伴って扉体が浮き上がる仕組みです。
洪水吐に採用しているところは御母衣の第二洪水吐、福地ダムの洪水吐
入鹿池の洪水吐等がありますが、基本的にふわふわします。
扉体の中に空気が入っていて浮き上がっていく仕組みなので。

放流量を厳しくコントロールするにはちょっと不向き。
余水をやさしく吐くのに適しています。

フラップゲートは阿木川ダムや寒河江ダムの洪水吐が有名どころです。
油圧シリンダーで制御されており、ゲートを無動力で倒伏させることが可能で
電源喪失するような緊急事態にもゲートを開くことができます。
 ※河川で樋門に装備されるぱたぱたフラップゲートではなく起伏するタイプのフラップゲート

阿木川は W18.0m×H3.3mが2門 です。
寒河江は W14.0m×H3.0mが4門 です。
昭和の建設例では兵庫県の青野ダムに5.0m×H2.2mが1門、常用洪水吐で装備されています。

オーバーフローで越流水深をしっかり稼ぐことができるゲートでなくてはならないので
ドラムゲートはまず除外。
そして阿木川や寒河江のゲートは扉高が3.0~3.3m。

温井は中央の狭い範囲で目標量の水を吐くために必要な扉体の高さは4.0mでした。

計算に計算を、検討に検討を重ねて選ばれたのが
目標とする越流水深を確保できる
電源喪失時にも対応できるドロップゲートだったのです。

ドロップゲートをクレストに備えているダムといえば殿山ダム。
殿山ダムのドロップゲートは代替わりしていますが現在装備されている扉体は
 W6.60m×H2.18mが6門 です。

温井はこの倍の大きさのゲートを選んだのです。
 W11.0m×H4.0mが5門 となります。

資料室で工事誌を読み漁った後、管理所にご挨拶に伺いました。
すると、ほどなく、温井ダムを愛してやまないダム愛好家の方が到着しました。

北九州のダム好き様です。
令和6年、ダムマイスター(一般)に任命されましたのでマイスター仲間♪


この日、天端には作業をする方がたくさんいました。
洪水期前の点検作業だったようです。

管理所の所長様にご案内を頂き、マイスター2名
普段は見られないゲート室に入れていただきました。

ここ、こんな風に開くんですね。
発電所の屋根でこんな感じで開くところあるなぁ、と思って見てました。


中に入ると、なるほど!! となりました。
普段、天端に並ぶゲートハウスの中身がここにある。
天端から飛び出さずにコンパクトに堤体下流側のスペースに見事に収まっている。

横に走るワイヤーは予備ゲートに繋がっているものです。
コンジットの予備ゲートなのでめっちゃ深いところまでつながってます。


んっふふふ。
IHI様御謹製♪


クレストゲートは油圧シリンダー制御。
これがもしもの電源喪失時に最後の砦となる油圧ユニットです。


所長様がちらっと覗いておられるのは貯水池側に開いた窓。
何が見えるのかなと近づきましたら…


越流頂が目の前でした。

うっわぁぁ。
これ、クレストゲートの扉体が全開でこの向こうに隠れてるけど
引き上げられてきたらこの視界にクレストゲート至近距離になるわけかぁ。

試験湛水の時はこの距離でクレストゲートを越流する水が見られたのかぁぁ。

すっげー すっげー すっげー!!!


こちらがクレストゲートの油圧シリンダーの先っぽです。
先ほどのゲートハウスとは別の場所で見せていただきました。