令和2年 瀬戸石ダム 見学 その2


左岸にある瀬戸石発電所の入り口のプレート。
めっちゃカッコいい字。

御母衣発電所の藤井総裁(第四代総裁)の字と全く違うので
もしかしてこれは初代、高碕総裁の筆なのかもっ♪と、現場でちょっとどきどき。

帰宅してから、第一回のwDNからずっとお世話になっている電源開発OBのF様に
写真を送って見て頂いたところ、高崎総裁の筆ではなく瀬戸石ダム竣功時の
第三代 内海清温総裁の揮毫ではないかと示唆を頂きました。

事務所の会議室で、今回の豪雨災害字の瀬戸石ダムの様子を
詳しく説明していただきました。


瀬戸石ダムは堤体は球磨村と芦北町の境界にあります。


芦北町は今回の豪雨で記録的短時間大雨情報が
7月4日の03:20、03:30、06:00、06:30
と、4回も出たところです。


運用水位は竣工時からは少し変更されているそうです。
利用水深がEL48.0mからEL50.0mまでの2.0mだったものが
現在はEL47.0mからEL50.0mの3.0mになっています。


でんぱつ様のHPでも資料付きでしっかりと情報発信されています。


まず、降雨の前に発電運用水位で一番低いEL47.0mよりEL44.0mまで下げていたこと。

瀬戸石ダムは下流にあった熊本県の荒瀬ダムと同じく、利水ダムの二類に分類されるダムです。
洪水時にはダム湖上流の堆砂が進行しないよう早めにゲート操作で水位を下げて雨を待ちうけます。

この操作は2020年度の事前放流水位(通砂排砂運用水位)でもあります。
2021年度からは更に進化させてEL41.9mまで水位を下げる予定です。

ちなみに通砂と排砂については本当によく間違って報道されるんですが
ダムにたまった砂を流すのは排砂(フラッシング)です。
ダムに入ってくる砂をそのまま通過させるのが通砂(スルーシング)です。
別々です。


瀬戸石ダムの洪水量はここに書いてあるとおり2000m3/sです。

瀬戸石ダムが竣工してから洪水量を超過した雨は57回あったそうです。

既往最大の流入量は昭和40年7月洪水で観測された6557.0m3/sです。
前線性降雨でした。
球磨川で洪水をおこす雨の降り方はいくつかパターンがあり
この昭和40年7月豪雨は球磨川の源流から河口までの
全川に渡っての前線性降雨であった事で非常に大きな被害を出したのです。

今回の豪雨では
源流部(市房ダム流域)湯山川で70mm/h超の雨
上流部(狭窄部・渡地区より上流)では支川の川辺川流域に豪雨集中
中流部は芦北町で記録的短時間大雨情報(雨量解析で110mm/h以上で発表)を4回発表
ですから
全川に大雨のあった昭和40年7月洪水を上回ったのでは…と思われます。

というのは今発表されている値はみんな速報値なので。
正確な値が解析されて発表されるには長いと2年くらいかかることもありますので。
地味に大切なポイント。


7月4日02:05の雨の様子です。

そして“経験したことのない急激な流入量の増加”と記されているのは
左岸の流域の芦北町に3時間あまりで4回も記録的短時間大雨情報ですし
桁違いの雨が一気に来たんだろうという事が予想できます。


“自然河川に近い状態”と、またまた控えめな書き方。

よく流入量と放流量が同じ(Qin=Qout)とか
ダムがないのと同じ状態と書かれる状態のことですが
ダムがないっていうのはピアによる嵩上もないってことか?と
ボリュームでなく水位標高でつっこんできた人でもいるのでしょうか。

それを言い出したら河道内に橋脚のある橋全部そうだぞ!!
河道内構造物で上流側に堰き上げ起きるのは当たり前のことだぞ!!

なので他のダムでもよく用いられる“ダムがないのと同じ状態”で
いいかと思ったりするんですが二類のダムならではの気配りなのか
ダムがないという表現がもろに下流の荒瀬ダムと結びつくイメージでもあるし…と
そう考えたらこの控えめな書き方は理由があってのことなのかな〜と
深読みしたりしてます。

とりあえずどんどん水位が上がってくるのでそれに合わせてどんどんゲートを開いていく状態です。


この頃のNHKの画面がこうでした。
芦北町と球磨村が大変なことになっています。


この写真を見て堤体の上下流で水位がほぼ同じであることが分かります。
ダムがあるから水害が起きたという言い分はつじつまが合いません。

ピアの分で堰上げが起きていたとしても
そもそも両岸の道路の高さも浸水していますから
水は平時より広がっています。

ダムのせいで浸水被害を受けたというのは間違いで
大雨によって浸水したという言い方が正しいのです。


ローラーゲートを一番上まであげて固定し全開のフリーフローの状態にした直後
管理所が浸水して(!)車が流され始めたという災害真っ只中(!!)
管理所で操作にあたっていた皆様が避難開始です。

どこまで頑張らねばならないのか管理所の放流師の皆様。
車流れるくらいの水深と流量の中よく御無事で避難完了してくださった。
ホントに無事でよかった。


で、避難した少し高いところからの記録です。
真ん中に写っているのは川のとっとっと館です。
瀬戸石ダムの魚道の観察ができる施設なのです。


川のとっとっと館の中の魚道の説明です。
トンネル式魚道。
上流から流量調節部、導水路部、暗渠部、トンネル部、明り部となっています。
明り部は河道内にあって折り返し魚道になっています。


DamMapsで見るとこんな感じです。
今回の洪水で魚道にも土砂や流塵が流れ込んで
閉塞したりしていないかと心配です。


7月23日の写真です。
川はまだセメントミルク色です。
4日以降も何度も大雨が続いていましたので。

これは雨の合間をぬっての撮影だったと思われます。


このあとロープ状降水帯が西から迫ってきていたのです。
筑後川もそうですが九州全体でこの7月は前線性降雨に
神経をすり減らしておられたのです。