鶴田ダム再開発事業 その3


天端右岸の旧管理所の場所に
左岸で川内川第一発電所の増設放流管として設置された
水圧鉄管の原寸サイズ輪切りです。


こちらが増設放流管になります。
以前のものもでっかかったけど
新しいものもすごい大きい。


放流管に使われているのはステンレスクラッド鋼です。


IHI御謹製です♪
うっふっふ。


大きなコンクリートブロックも展示されていました。
横に説明板があります。


なんと!!
ここにあるコンクリートブロックは堤体削孔を行った際の
貫通部のブロックでした。
いきなり6mもの大きさのブロックを切りだすわけではなく
細かく四角く切りだして少しずつ孔を広げていったわけです。


切り出されたブロックが現場の写真付きでこのように展示されています。


もう一つ横にあったこちらのブロックは堤体の一番底の部分だそうで
基礎岩盤の上に打たれたコンクリートが
しっかりと一体化しているのが分かる部分だそうです。

いずれこういうものも資料館展示してほしいですね。
屋内が無理ならなにか屋根の下で。


大きくすり鉢状に掘削され護岸された右岸側斜面。
以前来た時と全く別の顔になっていました。


鶴田ダム管理所に移動してきました。
管理所の敷地にそびえるNTTのアンテナ。
ダムに携帯基地局設置するのはとてもよいことだと
個人的に思っています。

というのは管理所自体はとても堅牢な作りであること
災害時にもここは倒れない作りであること
つまり敷地も安全が確保されているということで
災害時にはベースキャンプになることができるということなのです。

ダム管理所って非常用電源もあるし防災設備整ってるし
広域大規模災害があった時にはマイクロ回線もあるし
いろいろな連絡でとても役立つと思うので。

ま、それらは本来ダム操作のために備えられているものではありますけど。


ダム管理所にたくさんのダム仲間と一緒にお邪魔しました。

本日、必死で車を走らせ、鶴田ダムまでやってきた理由。
それは本年度で終了する鶴田ダム再開発事業ということで
ダム愛好家向けの特別見学会が開催されることになったからでした。

川内川河川事務所の皆様
鶴田ダム管理所の皆様
そしてそして
平成18年7月豪雨時にこの場所で指揮をとっておられた所長様にも
お越しいただいたのです。


まずは鶴田ダムの基本データと再開発の概要説明です。

鶴田ダムは137kmの川内川で河口から51kmの位置にあります。
大河川の中流域にある多目的ダムです。
地理的な特徴は上流の大口盆地と下流の川内平野の間の
山間狭窄部につくられていることです。

ダム湖は非常に長く、上流端は12kmも上流になります。
その場所にあるのが名勝・曽木の滝です。

大河川の中流に設けられた多目的ダムですから
洪水調節の回数も多いです。
鶴田ダムの洪水量は600m3/s。

昭和41年から平成28年までの51年間で洪水調節回数は149回にもなります。
1年に2〜3回の計算です。

そして近年、さらに頻度が増していて
平成24年から28年までの5年間で見ると30回洪水調節が行われており
年に6回となっているのです。

そしてそして
平成28年度はさらに平均値を上回る9回もの洪水調節を実施されたとのこと。

パワーアップした洪水吐は本当に竣工するや否や最前線で働きまくりなわけです。


続いてお話をいただいたのが
平成18年7月豪雨時の鶴田ダムの操作についてです。

何度も見て何度もその経過を読んで
このハイドログラフの形を覚えてしまうほど
何度も何度も見てきました。

このハイドログラフが教えてくれることは本当にたくさんあるのですが
一番大切なことは
“ダムは無限の洪水調節容量を持つ装置ではない”という当たり前の事実です。

あまりにもダムが治水面で活躍して各地で効果を上げてきたために
流域の治水安全度が上がったために
洪水への備えを、洪水への恐れを忘れてしまう人も現れ
そもそも洪水を知らない人たちの居住も増え
“ダムは治水をして当たり前”という利水ダムに対する誤解も出て
ミスリードをする報道のいい加減さも手伝って
ダムに対する理解は少しずつ深まっているとは思いますが
今でも、ドキッとするくらい勘違いに出くわすことがしばしばあります。

ダムの役割
ダムの仕事
ダムに興味を持った人から少しずつ
草の根で理解を深めてもらうことは本当に大事です。


そして講演の後
一同、わーっと声をあげて感動したのがこれ。

平成18年7月豪雨時の手書きハイドログラフです。
細かい数字がびっしり書き込まれています。
そして流入量がピークを迎えた部分は
データがはみ出すので上が貼り足されているのです。

T8310で但し書き操作をした時の丸山ダムもそうでした。
当時の手書きのハイドログラフの実物を見せてもらった時に
やはりピーク時のデータがグラフの枠をはみ出したので
紙が張り足されていたのです。

じっと見ているとお聞きしたエピソードが頭に浮かびます。
ここで管理所の屋上に浸水が
ここでCCTVカメラの映像が切れて
ここで光ファイバーが切断されて

155時間50分の洪水調節。
その生の記録がこのハイドログラフです。