吉野川分水 その1

2022/7/11 更新


大和平野に県南部の恵みの水を導水する吉野川分水。

その要になる下渕頭首工のレポートを書いたあと
時間を見つけては、ちまちまと分水路の取材をしていました。


米が残り少なくなってきたので買いに行ったら
ちょうど県産米がお安くなっていて喜んで購入。


そして裏を見るとまさかの吉野川分水。


米袋にこんなにダムの名前書いてもらってるのとても嬉しい。
奈良県産米に関係ない紀の川用水に十津川の水を供給してくれている
猿谷ダムまでちゃんと書いてくれているの素敵。


吉野川分水について一番詳しい資料をお持ちなのはここかなーと
畝傍御陵前駅から橿原神宮と反対方向にてくてく歩いて
到着したのは大和平野土地改良区事務所。


こちらの一階ホールで吉野川分水について学べる資料の展示があるのです。


入口の案内看板の背景写真は津風呂ダム。
そして見慣れたけど親近感はわかない奈良県のゆるキャラ(?)せんとくん。


展示スペースに入ると円筒分水の説明パネルがありました。
西部幹線の末端に設けられているようです。


吉野川分水を説明しているパネルです。

役割として
・用水
・河川水量の増加
・河川の水質の改善
・地下水の蓄え
・洪水の軽減
と書いてあります。

洪水の軽減は田んぼダムとして水田が雨水貯留機能を有することによります。
荒廃地でなく水田としてあることが大事なので、その水田を支える分水は
まわりまわって洪水被害の軽減になっているという考え方。


吉野川分水が生まれた十津川紀の川総合開発についての説明パネルです。
これ読めば全部わかる。


大和平野の悲願、吉野川分水事業はこのプルニエ協定から始まるわけですが
和歌山県がそうそう簡単に水利権を手放すわけがないので。

そもそも紀の川下流は河岸段丘が発達していて利水で苦労していた場所でもあるので
絶対に水不足になるようなことは許さない姿勢。

国が間に入ってダム建設や流域変更を説明して説明してやっとこぎつけたプルニエ協定です。


十津川・紀の川総合開発は大規模河川の流域変更という凄い事業でした。
そして旧・農林省と旧・建設省の共同事業というのがとても珍しいことでした。

事業概要にもありますがせっかくダムを造るのですから発電もしないと♪ということで
大迫ダムのダム直下には関西電力・大迫発電所が造られましたし
猿谷ダムの水は切川までの落差を有効活用して電源開発・西吉野第一・第二発電所が造られました。


大迫ダム、支川の津風呂ダム>>下渕頭首工>>東部幹線・西部幹線が大和平野にいきわたる吉野川分水
猿谷ダム>>西吉野発電所と黒渕ダム経由>>西吉野頭首工>>紀の川用水
紀の川本川に頭首工群
支川の貴志川エリアには山田ダムで補給
壮大な計画。


詳細な水路網を示した地図もありました。


この地図を見て、とりあえず主要施設は見ておきたいなと
ターゲットしたのは下渕頭首工からの水を東部西部に分ける東西分水工。
そして東部と西部の国営の施設の末端部。

◆ ◆


という事でやってきました。
御所市の樋野にある東西分水工。


年季の入った説明板発見。


昭和54年2月って年季入りすぎじゃ…。


分水の水路の横にはピシッとフェンスが張り巡らされていますが
所々で渡れるように架橋されているし立入禁止区域が明瞭なので安心。

写真左にある施設は奈良県水道の樋野沈砂池です。
分水は県水道の水源にもなっていますので。


とりあえず近くに行けるようなので階段を降ります。


転ばないように下ります。
階段の先には水路です。


下渕頭首工からやってきている水です。


こちらの導水トンネルは第二号導水隧道という名前です。


トンネルを出た水が少し先で二つのルートに分かれます。


水位標に流量が併記されている物は初めてみました。
これは便利。
水位でいま何m3流れているか分かるのとてもよい。


東部幹線と西部幹線の分岐です。
東部幹線は水路が下り坂に西部幹線は同じ高さで水が流れていきます。

しかし…この分流堤のエッジの鋭さが異常。
金属でコンクリートをカバーしてあってこんなに尖らせて
どれだけシビアに水を分けているのかと。
色々なところに水争いの痕跡を垣間見ている気がします。


その分流堤の上の通路のフェンスに水土里ネットの説明板。
この場所は水源の大迫ダムから49.6km地点
津風呂ダムから17.7km地点
下渕頭首工からは5.2km地点です。


東部幹線の方向に通路を進みます。


スルースゲートは全開でした。


少し先でまたトンネルになりました。
こちらは東幹線第1号隧道と書いてありました。