白根硫黄鉱山 見学 その1

群馬県吾妻郡草津町。
天下の名湯・草津温泉で有名なこの町の中心部から少し離れたところにこの鉱山はありました。

突然山の奥に鉱山の採掘場が現れた為に、今まで人が居なかったような場所に突如現れた
鉱山集落・鉱山町とは違って、草津は江戸期にはすでに温泉で賑わっていた歴史があります。

日本湧水の温泉の湧出量を誇る草津温泉。
周辺には天然の硫黄も豊富でした。

戦争の頃、草津の硫黄は貴重な物資でした。
いくつもの硫黄鉱山が草津を中心としたこの一帯に開発されてきました。

戦後、石油から硫黄を取ることが主流になって国内の硫黄鉱山は次々に閉山していきました。
この鉱山も同じです。


白根硫黄鉱山への道は一般車両立ち入り禁止となっています。
国の直轄事業で酸性水の中和事業が行なわれているからです。

鉱山への道を歩いていくと旧建設省の名が入った現地の中和事業実験施設の説明板が立っていました。
そこには次のような記載がありました。

事業の目的
吾妻川上流域では、草津白根山の火山活動により生じる強酸性の湧出水の影響で酸性化している河川があります。
これらの河川では、魚類の生息は見られず、水利用なども困難な状況にあります。
この事業は酸制水の水質の改善によって、自然環境の回復、水利用などにおける障害の解消を目的として行ないます。

草津白根山の麓に湧き出る温泉。
それはpH2.0前後という強酸性の湯です。
草津白根山の周囲の川で温泉の湯が流れ込む川は常に酸性となっていました。

しかしこのエリアの川がすべて酸性であった訳ではありません。
川によっては特に酸性化していない川もあったのです。

でも戦争の頃に硫黄鉱山が次々と開発されていき坑道から出る水が強酸性であった事から
今まで酸性で無かった川も酸性河川となっていきました。

この白根硫黄鉱山のある谷に流れている赤仁田沢川もそうでした。
鉱山が開発されるまでは酸性河川ではなかったのです。


閉山した後も坑道からの湧出水は止まりません。
赤い丸印のついている場所では坑道から硫黄分を大量に含んだ水が湧き出しています。
これらの湧出水がそのまま下流に流れて川に入る事で川が酸性になってしまいます。

中和事業は現在、国土交通省関東地方整備局が行なっています。

 


鉱山跡は山の中腹にあります。
そこまではずっとこの様ななだらかな傾斜を登っていく事になります。

夏草の臭いばかりで硫黄の臭いはありません。


一つ目の登りを迎えると沢に橋がかかっているのを見つけました。
あまり渡りたい気分になる橋ではありません。


更にどんどん登っていくと焼けたような色の斜面が見えてきます。

ここを越えると鉱山施設のようです。


不意に開けた視界に遺構が姿をあらわしました。
夏の緑と真っ青な空の下にコンクリートの遺構です。
近づくにつれ、硫黄の臭いがどんどん強くなります。