紀州鉱山見学 その1

ぼんやりとNHKの番組をBGMに流して、持ち帰り仕事の書類を能率悪く
ちまちまと片付けている時に耳に飛び込んできた単語がありました。

...この絵巻には「辰砂」が使われていました....

「辰砂」!それは私が大好きな絵の具の色です。水銀から取れる深紅です。
美しい赤は古くから仏像の彩色や日本画の絵の具として使われてきた鉱物
由来の有毒の色なのです。

NHKは淡々としたナレーションで進みます。源氏物語絵巻に使われていた
辰砂による彩色。その辰砂を産出していたのが現在の三重県にある紀州鉱山
であると現地の映像が数分でました。

        これは行かねば

書類仕事はレイアウトもいいかげんに頓挫する事に成りました。
早朝出撃のためには早寝が必須です。休みの前になんてタイムリーな番組
だったのでしょう。NHK大好きです。


国道168号を延々南下します。この日は小雨の降る曇り空でした。日が昇る
時間になってもあたりは明度こそ高いものの彩度はあがりません。気が焦って
早く出たのはいいのですが時間が余るといういつものパターンで朝御飯は別の
場所で食べる事にしました。

紀州鉱山は三重県南牟婁郡紀和町にあります。ここに行くまでに一つ行きたい
別の場所に寄る事にしました。紀和町から少し行き過ぎることになりますが、
東牟婁郡熊野川町の「静閑瀞」「宝竜滝」ここでひとつハイキングと朝御飯を
済ませました。


地図で確認しながら小雨の中を進みます。まず行ったのは鉱山資料館です。
誰もいない資料館でした。平日の午後、山間部の小さな町、鉱山町で栄えた
面影だけが残っている道路脇の風景です。短いトンネルを抜けると集落の中
に資料館はありました。

このときに自分は選鉱場に背を向けている形になっていました。小雨が少し
強くなってきたこともあり、慌てて玄関に向かう私の目にはこの神殿にも似た
山腹の遺構は入っていなかったのです。

資料館は紀州鉱山の歴史と閉山までの流れを短くまとめた(17分)ビデオを
見る事から始まりました。黒部ダムの資料館でもそうだったのですが、感動
しやすい性質なのでこういう記録ビデオに宣伝的要素が入っていようが、なん
だろうがかまいません。閉山までの苦渋の選択、町のためにと取り組んだ
企業の様子に鼻の奥が熱くなりました。


資料館で公開している選鉱場の模型です全盛期はこんな風だったんですね。