川の向こうに 18

山の向こうに送電鉄塔。
コンクリートで作られていた電柱から鉄塔に変わっていった電気の流れ。

渓谷に造られ頑張っていた発電所の遺構。

この扉が開いた時に水車の熱気が外に漏れ出していたはずです。
それが途絶えて外気と同じ空気が漂うようになってしまった建物。

人里はなれた山の中
水力発電に適した場所に
鉱山の電力をまかなう為に
発電所が頑張っていた頃。
そしてここから人が姿を消し
水車は回転を止め
送水も止まり
建物は緑に隠されていくばかり

発電所と知らなければ
四角いコンクリートの
緑に侵食されたこの建物は
檻のように見えるでしょうか
扉の開いてしまった檻からは
ここが現役であった頃の気配も思い出も
逃げ出してしまって霧散してしまったかのようです。
山蛭に襲われて血だらけになった手足を清流の水で洗いながら
ぼんやりと
ただ、ぼんやりと
やさしい草に覆われていくコンクリートを私は眺め
そしてお別れしました。