SHI-O-N 8

新緑に溶けるように自己主張の弱い色に変わっていった家々です。


階段はすっかり苔生しています。
もう少し早く来ていたらここにサツキが咲いていたかもしれません。


母屋の反対側の納屋はぼろぼろになっていました。
日陰にあって、湿った気配が漂っています。


道の左右は急斜面です。
その斜面に段々畑を作るように平らな土地を確保して家を建てるので
この集落の家々は皆細長い構造になっています。


林の中にひしゃくが置いてある水場がありました。
働いている時にここで御飯を食べたりしていたかもしれません。
ひしゃくには名前も書いてありました。
先ほどの、花が咲き誇っていた庭の家の方の名前でした。

帰ってきた時にはこのひしゃくを思い出してくれるでしょうか。

ここで自給自足の生活をするということは技術と知識を必要とします。
強く生きられる人しか出来ない事です。
長くこの地に住んでいた人も歳をとり、身体が弱ってしまったら
生きることは辛くなるでしょう。
住み慣れた地を離れていく事は苦汁の選択だったに違いありません。


むかし、この川も氾濫したのでしょう。
今は川幅に流れが見合わず、淀みすらあります。
藻が生えている川は流れが緩やかな証拠です。

水害に襲われ、復興して鉱山景気に湧き、そして閉山の時がきて
又、静けさが戻ってきました。老齢化した集落は人が戻ってくる事
でしか復興できません。

今も続けられている治山事業と川の護岸工事。
砂防ダムの建設の槌音だけがそこにありました。