SHI-O-N 3

鉱山景気に湧いた地区はふたつありました。
一つは急峻な山の頂上付近の集落、もう一つは谷底の集落。

山の頂上付近の集落にはお住まいの方もまだいらっしゃいます。


この地区にあった小学校です。
通う児童はもういません。
小さな校舎は棟続きの二棟だけです。


校舎の横に崩れた百葉箱があります。
小学校周辺に家屋は集まっています。


この集落は坑道からとても近くにあります。
山の頂上付近で、平坦な土地が少ない環境。
昔からここに住んでいた人も鉱山で働く為に近隣からきた人も
ここに居を構えていた事でしょう。


一番近くの集落からでさえ8km離れた山の上です。
私が訪れて、周囲を散策し終えた6時30分頃、人の気配のする
家屋で車のエンジン音がしました。
ふと見ると、ランドセルを背負った子供が玄関に立っています。
車のエンジンをかけていたその子のおじいさんであろう人物は
不思議そうに私の姿を見ていました。

自分の家から100mと離れていない場所にこの小学校がありながら
廃校となってしまった為に、この小学生は毎日学校に行く為にこんなに
早起きして遠い遠い小学校まで送ってもらわなくてはならないのです。


校庭は芽吹いた柔らかい色の草で覆われていました。
ここに歓声が響いている頃にはこの集落全体にも活気が
満ち溢れていたはずです。

今は静かに夜明けを迎えています。
鳥の声に人のたてる音が負けてしまうほどに静かなのです。