SHI-O-N 1

1889年の8月18日から20日に渡って降り続いた雨は
この地に凄まじい災害をもたらしました。
「紀和水害」と呼ばれる災害でした。

近隣の十津川村では死者は168名にものぼりました。
住居も耕地も全てを失った村民は2500人以上という空前の規模で
北海道に移住し、そこに新十津川村を作りました。

十津川村が壊滅的打撃を受けて北海道に村民が移住するという
極めて特殊な事例はTVドラマにもなった、川村たかし氏の小説
「新十津川物語」で世に知られています。

西吉野地方はこの豪雨により、山腹崩壊、土石流、連続表層崩壊
が全域で起きた為に、その地形も川の流れすら変わってしまった
という天災を受けた場所です。

今回私が訪れたのは十津川村ではなく、その近くにあり、同様に
水害で壊滅的被害を受けた地域です。


新緑が美しい里山に細く流れる川がありました。
川岸はきちんとコンクリートで護岸工事がなされています。
放棄された段々畑のような草生した地に小さく廃屋が見えます。


もう放棄されてから長い家のようです。
でもまだ上屋が残っています。


近づくと数枚はガラスも残っていました。
でもヤブカラシとアケビの蔓に侵食されています。
人がすまなくなった家屋はあっという間に枯れていきます。
この家屋は水害を受けたものではありません。
水害に遭った家屋は畳も床板も全てめくれ上がり、壁は倒壊し
形をとどめているのは屋根ばかりという状況になるか、
すっかり流されてしまっているということです。