廃貯水池 3


縁に戻って取水塔の中の深さと考え合わせるとやっぱりこの池はかなり深いようです。
取水口がいくつもあるようには見えなかったので堆砂が進んでしまえば取水できなくなるでしょう。

それよりもまずここの水を今は取水して使っているのかという事なのですが
どうやらもう棄てられているようです。

現役で使われているならフェンスなどで管理されているものです。

でも何もありませんでした。

誰も目を向けない貯水池になってしまっているのです。


取水塔の反対側に山からの水が流れ込んでくる水路があります。


そちらに回ってみると昔は板を落として調節していたと思われる溝を切った支柱が残っていました。
さらさら流れてくる水。
川があったのでしょうか。
地形を見る限りそうは見えません。

ここにあったのは沢だけでしょう。

だから魚がいないのです。

棄てられた貯水池です。

蒸気機関車が走っていた頃に
この貯水池の水は大事に使われていましたか

電化された鉄道。
鉄道会社が所有する発電用貯水池は各地に残っています。

でもここはそうでは在りませんでした。

海からすぐの山の中。

 

魚がいたら
川に造られた堰堤だったら
ここは魚釣りの人が良く訪れる場所になれたかもしれません。

魚釣りの人も来ない
誰も来ない
所有者が点検に訪れる事も年に数回かもしれません。

壊れそうに無いほど堅牢に造られている為に放置されているように見えました。

造られて
役割を失って
でも形が残っているものは
人の姿が見えない時に本当に悲しそうに見えると思いながら
私は廃貯水池を後にしました

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