足尾 散策 9

精錬所の前から足尾の市街地に向けてすこし歩くと深沢という地区にやってきました。

砂防ダムのある沢筋に煉瓦の壁と社宅の跡が見えました。

この看板を見つけて細い道を登り始めたところで地元の方に声をかけられました。
「こんにちは」
「こんにちは」
「観光ですか?」
「はい。綺麗な煉瓦が見えたので」
「どちらからですか」
「奈良からです」
「あぁ、それで関西弁なんだ」
「やっぱり関東の方は敏感ですね(笑)」
「足が痛いのですか?」
「ええ。でもゆっくりなら大丈夫なので」
「私も身体中、悪いところばかりです。でも双愛病院にいい先生が京大から来たからね」
「京大ですか。そのお医者様も関西弁ですか」
「そうですよ。長患いで困っていたんけどその先生が来てから本当に良くなってね」
取り留めの無い会話が10分くらい続きました。
ダムに行っても産業遺構に行っても各地でこういう
突然現地限定世間話をされてしまう事が多いです。
地元の人にしかわからない事を一杯話されて困惑することもしばしばです。
でも大抵はそんな事に頓着せずに自分の事を熱心にお話されるのです。
最高3時間、身の上話を聞かされたことも在ります。
過疎地にいくことが多いからでしょうか。
足尾ほど人がまだ沢山残っている場所なら
人との会話が少ないわけではないと思うのですが。
しばらくお話を聞かされていましたが愛犬が騒ぎ出したので
切り上げて深沢社宅跡の方に登り道を進みました。

深沢地区の社宅にはもう誰も住んでいません。
建物はかなり崩壊が進んでいます。

外れた窓枠にちぎれた電線。
雪が降っても台風で壊れてもここには修繕という事がもう成されません。
ここにあった賑わいは閉山と共に消えてしまったのでしょう。

明るい日差しの下に乾いた建物が静かに在るだけです。