足尾銅山見学 その6

銅親水公園。道路からあまりにも巨大な砂防ダムの提体が見えています。
松木の地を覆い隠すかのように。ここまで大きな砂防ダムを作らなければ
ならないほどに足尾の山は木を失っています。
上の写真で左中央に見えている三角屋根の建物が銅親水公園の資料館
です。こちらに詰めておられたおじいさんとおばさんは快く私に館内の撮影
を許可してくれました。
ここには鉱山の模型と航空写真、田中正造の活動、鉱害、山火事の発生
鉱山史について見やすくまとめられています。

砂防ダムと治山事業に関する航空写真です。一面の禿山です。
そして中央に黒い斜面があります。
これが鉱犀「カラミ」です。航空写真ではっきりと見られるほどに
その廃棄物は広大な面積を覆っているのです。
カラミの上の山間の平地が松木村があった場所です。

模型でもはっきりと「カラミ」は現されています。
資料館を出て提体に向かいました。傾きかけた陽射しに気温が徐々に
下がり始めています。一瞬迷いましたがここまで来て松木村を見ずに
帰る事などできませんでした。
提体の奥に作られた遊歩道は延々と続く階段です。そびえたつ提体は
三つの川から流れ来る土砂を堰き止め、粛々と水を下流へ流しています。
20分以上かかって上りました。古傷の痛む足をずりずり引きずるように
ススキばかり目立つ造成地を進みます。目の前にでてきた風景は閑として
味気なく、この地の歴史を知らずに見ればただの河川造成地にしか見えな
かったかもしれません。
なにもありません。
村があったという痕跡を視覚情報で何も捕らえられないのです。
あるのはただカラミの山だけです。

何かある、絶対何かあると見つめていた時にふと音がしない事に気づき、
一瞬、後に川の音が耳に戻ってきました。
音が消えていた。
聴覚を遮断するほど目を凝らしていた自分に少し驚きました。

銅親水公園に戻りました。駐車場の端から精錬所を見ています。
全盛期はこの煙突から毎日、煙が今居る場所に流れていたのです。
今は煙も無く
足尾の鉱山は昏睡状態の人にも似て、静かにひっそり生きていました。