明延鉱山 錫の行方 その5
早くお休みにならないかなぁと待ちわびていた錫工芸体験当日になりました。

到着しました『大阪錫器 株式会社』前。
感謝祭という事でのぼりがパタパタしております。
朝9時ちょっとすぎだったのでまだかなーとか思っていたら
もうお客さんが数組来ていました。
大阪人、朝早すぎです。
早起きが取得の自分も吃驚の行動時間。
中に入れていただいてまずはずらりと並んだバーゲン品に見蕩れます。
傷物とか難有とか書かれていますが何処が傷なのかわからないのがほとんどで
それが物によっては半額くらいになっているのはちょっと吃驚でした。
展示会などに持っていった商品が殆どだという事です。
明延の錫が自分にとっては今日の主役ですが
いつも写真やPCやいろんなことでお世話になっている方が
お酒好きなので酒器をひとつ買って帰ろうと考えていました。
かなり必死で品物を見ていましたら
「おはよー」
「おはようございますっ」
声をかけられて振り向くと横に伝統工芸士の社長がお越しになっていました。
ちなみにこちらの社長は錫の鋳造では国内No.1の技術をお持ちの凄い方なのです。
「あの地金やけどな、ちょっと困った事になってんねん」
「え...?何か問題が?」「形にならへんねん。97%どころやない、錫が90%くらいかもしれへん。
銅か何か混ざっとるんやと思うけど、めちゃくちゃ硬いねん。
鋳造にできへんから2mmの板にして作ろうとしたんやけど...」
「・・・・はい」「うちで使うとる錫やったら綺麗に形になるんやけどあれでやろうと思ったら折れてまうんや」
大ショック!!

お願いしていた錫塊は作業場で
他の錫と別にしてレードルに入れられていました。
錫はとても軟らかいために製品にしてからも乱暴に扱うとすぐに傷が付いてしまう金属です。
その軟らかさを知っている方が吃驚仰天した錫の地金を持ち込んだということになります。
望みどおりの形にするには鋳造しかありません。
しかし型から造って鋳造してもらうのは
一点物に物凄い金額がかかる事になりますから
社長さんも渋い顔。
社長さん儲けとか考えておられなくて、時間のある時に
ちょっと造ってあげようという気持ちだったらしいのです。

曲げようとするとポキッと折れてしまったそうです。
そしてかなり不純物が多いです。
呆然とする私に社長が提案してくださいました。
「珪砂の中に溶かした錫を落として塊にしたらどうかと思うてんねん」

これがその珪砂です。
物凄く細かい砂です。
ミルとかで挽いたレベルではない細かさです。
この中に錫を流しいれたら.....
礫岩みたいになるんじゃないのだろうかっ?
素人なので全然詳細がわからないまま
とにかく社長は錫のプロフェッショナルなのだから
社長の仰るとおりにやっていただこう!
と、この技法をお願いいたしました。

「ほな、それでいこか」
社長がおもむろにバーナーに点火。
ドキドキワクワクです。