川上村 うろうろ その3


おまつり会場を後にしてやってきたのは白屋地区です。

大滝ダムの最初の試験湛水の途中で地滑りの兆候が発生し
水没しないにもかかわらず、全戸移転することになった地区です。

この地区のために架けられた橋がとても美しく
この集落の人のために架けられたのにその集落の人はみんな
ここから別の場所に移られました。

それが哀しくて
橋として人と暮らしを支える役目を与えられたのに
人がいなくなってしまったことが哀しくて
どうしても、この橋を渡る勇気が出ませんでした。

でも、この日、おまつり会場でお聞きしたところ
白屋地区は綺麗に整備されていて
鹿除けの害獣防止ゲートを自力で開閉しさえすれば
だれでも入っていける場所になっているので
行ってみてくださいという事だったのです。


こちらが害獣防止ゲート。
熊に注意のプレートもあります。

とにかく鹿の食害が深刻なのです。
大台ケ原も大変なことになってきています。

奈良であっても神の御使いとして大事にしてもらえるのは
春日大社の神域とその周囲だけです。
山一つ越えたら畑をあらす害獣です。鹿。


進んでいくとこんなに綺麗な駐車場とトイレと広場ができていました。


家族連れで来る場所としても全く違和感がない。
ごみ一つ落ちていない。
きっちり清掃されているのが素晴らしい。


いつの間にこんなすごい整備が行われたのだろうかときょろきょろしていると
この場所の説明板がありました。

整備の主体はもちろん川上村です。
でもたくさんの支援があったみたいです。
協賛企業・団体として名前が書かれていたのが

大和ハウス工業(株)
近畿日本鉄道(株)
佐藤薬品工業(株)
奈良交通(株)
鹿島建設(株)
市民生活協同組合ならコープ
奈良中央信用金庫
奈良ダイハツ(株)
(株)イムラ封筒
奈良県農業協同組合
奈良トヨタグループ
ダイドードリンコ(株)
森林環境保全促進和歌山市議会議員連盟
損保ジャパン日本興亜
(株)タカトリ
不二熱学グループ

でした。


白屋地区がなぜ今の姿になったのか
その理由も説明板に記されていました。

企業・団体との協働による水源地の村 「未来への風景づくり」
かつての白屋集落

大滝ダム事業により発生した地すべりのため、全戸移転を余儀なく
されたこの白屋地区は、日当たりがよく、冬でも暖かい、作物のできに
秀でた豊かな地区で、また長寿の里でもありました。すでに地すべりの
対策工事も終え、建物は何も残っていませんが、石積みの独特の景観
が当時を物語っています。


白屋地区の地図になります。
白く描かれている道は車が通行できる幅があります
細い茶色の線で書かれている道は集落の中の人道です。


集落跡には電信柱や真新しい水道の外蛇口もありました。
あちこちには広葉樹の若木が植樹されていました。
この若木を守るために集落入口に害獣防止柵が設けられているようです。


集落の中の急坂と階段を上っていきます。


登っていく道から振り返ると大滝ダムのダム湖の水面が見えました。


家屋の建材の類はすべて撤去されており、住居の土台、石垣だけが残され
山の上まで続いています。


集落の端にあった神社への道です。
神社跡地には車でも行くことができます。

急な斜面に見えているのは集水井です。
地滑り地に設けられる地中の水を集める施設です。
白屋地区内に、いくつか設けられているようでした。


見晴らしの良い広い場所に到達して対岸を見ると
9月の末にお世話になっている方と一緒にランチを食べた
あつまり食堂のある人知集落が綺麗に見えていました。


あつまり食堂でいただいた日替わりランチです。
美味しかった。

これは2003年に撮っていた白屋地区の写真です。
対岸の人知集落側から見たところです。

たくさんの家があり、日当たりのよい豊かな集落であったことが
川上村の歴史を記した文献に載っていました。


白屋地区にお住まいだった全員の移転と
この場所の地滑り対策工事が終わって
ダム建設で水没する地域の住居と同じように
建屋はすべて取り払われています。

水没区画の住居はすべて撤去することになっているのです。
貯水時に浮遊し、ダムのゲートの挙動や放流を阻害する要因にならないように
水没してもその場所から動かない構造物以外はすべて取り払われます。

しかし、貯水位が下がった時に顔を出す村役場跡のイメージや
ダム湖の中に残る発電所建屋のコンクリート壁のイメージで
水中に集落の住居がそのまま残っていると思い込んでいる人が多いようです。

実際はここで見られる風景のように
石垣などの土台だけになっているのです。


ずっと渡ることをためらっていた白屋橋。
白屋地区のために架けられた橋。

立ち入り禁止だった白屋地区は地滑り対策が完了して安全になり
今は訪れたい人が立ち入っても咎められない場所になりました。


白屋橋からみた白屋地区です。
日当たりのよい山の斜面、豊かな暮らしがあった場所です。

大滝ダムの貯水位が高い
晩秋から冬にかけての天気の良い日に
大滝茶屋の柿の葉鮨をお昼ごはんに
ここでゆっくり過ごしたい

そんな気持ちになりました。

大滝ダムは2023年に完成してから10年になります。
周辺にもぜひ、足を運んでほしいと思います。