横瀬川ダム 見学 その3


常用洪水吐からの水の流れはというと

オリフィスから出てきた水が、堤体側水路の中に設けられた
滑らかカーブの壁に当たって左右岸方向に流れる。

側水路の両端に設けられた水抜き穴で少量の水はそのまま
堤趾導流壁の立ち並ぶ下流に流れていく。

流入量>放流量であれば側水路の中は徐々に水で充填されていく。

堤体側水路が満水になったら越流頂から流れ出す。

堤趾導流壁がそれを受け止めて減勢しつつ下流河道に導流する。

ということなのですが
何故、こんな奇抜なデザインにしなくてはならなかったのかというと
堤趾導流壁の直下がほとんど手つかずになっているあたりに理由があるそうです。


天端は短いのですぐに左岸に到着。
堤頂長は188.5mでとてもコンパクトな堤体です。


左岸から見たところです。
直線多用でシャープな印象の中、側水路の越流部のカーブが目立ちます。


堤趾導流壁は最新型なので大きな段と小さなブロックが
段違いで組み合わされているのです。
ちらり。

この小さなブロック、実はとても効果があるのです。
大きな団だけの堤趾導流壁に比べてこの小さなブロックが一つあるだけで
減勢効果がぐぐっ!と増して堤趾導流壁の壁の高さを低く抑えることができるのです。


あまり天端から離れなかったので上流面はこのくらいしか見られませんでした。


貯水池はこのくらいの水位でした。
バックウォーターに水没林が見えていました。


一通り堤体を見たので勉強になる資料を探して天端横の管理庁舎へ。


玄関入ってすぐの所に説明パネルや模型がありました。
これはありがたい。


2022年の土木学会でデザイン賞を獲っていたのですね
うんうん。堤趾導流壁、凄くカッコいいですし。納得。


模型出地形とダムの位置を確認します。
来る途中で堤体下流側の写真を撮っていたのが
写真下の道路です。


何故この形の洪水吐になったかの説明パネルですが
ちょっとこれは専門的過ぎて理解大変だと思います。

堤体側水路より、当日0.6t/s吐いていた利水放流管の方が興味津津になりました。
この仕組、模型実験で見てみたいなー。

そして、当日は急いで眺めていたので気付かなかったのですが
横瀬川ダムのオリフィスはゲートレスで運用していますが
いざという時には防災操作が可能な非拡散流ローラーゲートが装備されていて
異常洪水時防災操作もできる仕様になっているのです。
中筋川ダムがゲートレスだったのに防災操作ができるゲートを
改良工事で備えたのと足並みをそろえているのがさすが令和のダムって感じです。
素晴らしい♪

一般社団法人 ダム・堰施設技術協会が発行している
取水と制水 2023/.67 号では横瀬川ダム特集が組まれています。

その特集記事のひとつ「横瀬川ダム建設事業の概要」では
この風変わりな洪水吐の構造についての説明がありました。
“横瀬川ダムの洪水吐きは、当初、導流部を漸縮導流形式、
減勢工を水平水叩き式として検討していた”
と書かれていました。
え…
漸縮だったの…
水平水叩きだったの…
つまり

漸縮型堤体導流壁で水平水叩きの減勢工ってことは
水資源機構・川上ダムのような姿で検討されていたと…。


川上ダムの完成イメージCGです。
水平水叩きを設置するということは直下に上下流方向に大きなプールをつくるイメージ。
かなり下流河道を触らないと無理ということです。

横瀬川ダムではダム下流端から約10m下流に
地域の伝統・伝説に関係する「とどろの滝」と祠がありました。
更に、滝の下流の河岸に自生している天然林も触らなくてはいけないことが
問題となり別の案を考えることになったそうです。

下流河道の改変区間をできるだけ小さくする洪水吐はないかと
水理模型実験を行って、洪水吐からの放流水をダムの中位標高において
ダム軸と平行の横方向に分散させて貯留(一次減勢)し
側水路にたまった水がさらさら越流していく分を
堤趾導流部で減勢させる(二次減勢)という方法を開発したのだそうです。

ゲートレスダムが管理面からもお勧め
防災操作のためにオリフィスが絶対必要
ゲートレスクレストで目標量を吐く為にはこのくらいの越流頂長が必要
堤体上でできる限り減勢したい

うーん。
ゲートレスクレストだけだったら堤趾導流壁でいけた?
オリフィスも端っこにつけたら堤趾導流壁だけでいけた?

素人なので疑問符が飛びまくりなのですが
素人が考えることなんて専門家の方はとっくに考えられていることなので
それではだめだったからこのデザインになったのだという事です。

謎の堤体側水路が印象的ですが
何よりとにかくその堤趾導流壁が革新的な美しさなので
中々遠くでたどり着くのも大変な横瀬川ダムですが
中筋川ダムと一緒に会いに来てほしい素敵なダムでした。