山須原ダム改造工事現場見学 その1

2016/5/21 更新

耳川水系には
最上流から上椎葉ダム>岩屋戸ダム>塚原ダム>山須原ダム>西郷ダム>大内原ダム
塚原ダムと山須原ダムの間に支川の七ツ山川と柳原川が合流しており
柳原川には諸塚ダム、七ツ山川には宮の元ダム、他にも取水堰があります。


2009年に見学させて頂いた時の山須原ダムです。
耳川水系で二番目に古いダムで竣工は昭和7年(1932年)です。

平成17年台風14号(T0514)による洪水時

山須原ダム上流の塚原ダムのわずか600m下流。
野々尾地区の大規模土砂崩れが発生し河道閉塞がおきました。
(高さ57m、幅120mもの土砂が一瞬にして耳川を堰き止めたとのこと)

河道閉塞をもたらした脆弱な天然ダムは押し寄せる水に削られ
50分余りで崩壊し大量の水と共にこの山須原ダムを襲いました。

その話を聞いて想像するだけで
 絶対にゲート破損してる
 巻上機も壊れたに違いない
 堤体は無事でも鉄物は絶対大被害
と、思い込んでいたのですが
山須原ダムはゲートも無事で
押し寄せた莫大な流木もきっちり捕捉し
ダム機能を失っていなかったというのです。

どれだけ強固な素晴らしいダムなのだろうかと感動のエピソード。


ということで山須原ダムの改造工事は
始まったというお話をお聞きしてからもうずっとずっと気になっていて
鶴田ダムの再開発と同じくらい注目していた工事現場だったのです。

工学会の偉い先生方と一緒にわくわくが止まらない。
でも天気は悪い見学日当日。


バスから降りるなり、わーい♪と
仮締切の上に設けられた国内最大サイズのSR堰を撮りに行き
「後で近くで見られるから焦らないでくださーい」
「こっちでまず説明聞いてくださーい」
と、九州電力の方から手招きされるなど。
すいません。


工事現場のテントに展示されている工事概要のパネル。

次に見せて頂く予定の西郷ダムの改造工事は
同時に始めて来年度には完成するかなという予定通りの進捗状況。

しかし山須原ダムは工期が延びました。
その理由をお聞きしましたところ色々吃驚するお話が。


まず衝撃的なT0514災の時のITVカメラ映像。

なにこれ…
なにこれーっ!
堤高 29.4mの堤体が
下流側でこの水位って
ゲートピアの下まで水没してるよぅぅ(汗)


最大開度まで引き上げられたラジアルゲート扉体が巻上機の下流側に見えています
押し寄せた大量の流木が堤体にこんなに引っ掛かっています。
でも天端は越流していない様に見えるっ!


上流側から撮った写真がなくて比較しづらくて申し訳ありません。
ラジアルゲートの弧を考えても
ほとんど扉体は天を向くくらい上げられていたことが見て取れますし
ゲートピアの上流側に在るゲート間をつなぐプレートガーダー管理橋がこの位置。

左岸の魚道や側道の方はゲートピアのある部分より少し低くなっています。


なのでゲート部での大きな越流はありませんでしたが
この側道側に水は越流していったそうです。
怖い怖い怖すぎる。


とんでもない水量が押し寄せたT0514災。
これに伴い山須原ダムは洪水の時には
上流から流れ込む土砂を下流に流下させるという
本来の川の働きに近い運用、操作を実行するために必要な機能として
安全に洪水を流下させるゲートの整備をすることになったのです。

ダムとしての仕事を続けながら堤体を切り欠き
巨大な新設ゲートを取り付けるために必要なこと。

それは仮締切工事です。
工事現場をドライにするために必須の仮締切。
しかしこれが大変でした。