矢木沢ダム見学 その4


当日の水位はEL 849.00m。常時満水位の−1mでした。

ネイチャービュー矢木沢のほうに向かいます。
1階は資料展示、3階は展望ホールになっています。

エレベーターで3階に上がりました。
誰もいないかと思っていたらおばさん二人とおじさん一人が
ダム湖に面した音声ガイド付の椅子にふんぞり返っていました。
おじさんはダム湖と奥利根の自然についての説明が流れる
音声ガイドを聞きながら鼾をかいています...。
おばさんの一人はお腹が空いているらしく”ご飯に行こう”と
でっかい声でおじさんに喋り続けています。
もう一人のおばさんはこれまたでっかい声で音声説明に
相槌を打って”はいはい。それで?” ”それから何?” と
わずか三人で喧しいったらありません。

こういう下世話な空気にすぐ気分を害する私はむかむかした気分で
それでも資料を閲覧していました。

すると凄い写真が展示してありました!


ジャンプ台・洪水吐きからの放水の写真があったのです!

うわぁぁ〜。  (ノ゚ο゚)ノ   滝壷やぁ!
こ、この勢いで放水したらあの川原
破壊されるのではっ!?
対岸まで水が届いている気がします。

写真に張り付いている時にふと悪魔のささやきが
耳元に届きました。

踵を返して管理事務所に向かいます。


管理事務所の1階でインターホンを探してうろうろしました。
かなり探しましたが見つけられません。
出入りされていた業者の方が不審に思って声をかけてこられました。

「どうしたんですか?」
「管理事務所のインターホン探しているんです」
「あー。ここはそういえば無かったような。
2階が事務所ですから上に上がったらどうですか?」
「あ、2階なんですか。はい。そうします♪」

とことこと階段を上がっていくと事務所の扉がありました。
中をそろりと覗くと職員の方と業者の方の二人の姿が見えました。

「すいませーん」
「?はい?」

「あのぉ..あちこちでダムを見学して回っている者なんですが
三つほどお聞きしたい事とお願いしたい事があるのです..。」

「はい。何でしょうか」

「資料館で洪水吐きからの放水写真を拝見しました。
あの写真は分けてもらえないでしょうか?」

こんな事言いに来た奴見た事ない と、呆れられるかと思ったのですが
若い職員の方は一瞬考えた後に
「えーと、あの写真じゃなくて平成13年に行った放水の写真だったら
ありますよ。」と所内のPCに向かわれたのです。

「ちょっと待ってくださいねー。」
「ありがとうございますー♪」

データを探してもらっている間に職員の方がこちらを向きます。
「三つって仰ってましたよね。後ふたつは何ですか?」
きらりと鋭い眼差しに一瞬躊躇しましたが勇気をもって..。

「水資源開発公団のロゴの入ったTシャツとかグッズを売っていただけませんか。」
「グッズですか?...イベントの時とかに配るうちわだったら....。」
「うちわとタオルとボールペンは持っているんですー。
奈良の布目ダムで貰いました。Tシャツ欲しいんですー」
「えーと..今ここには無いです。すいません。」

素直に諦めましたが職員の方が着ているワイシャツが公団ロゴ入りだったので
それを羨ましそうに見つめます。

「このダムはコンバインダムだと思うんですが天端の説明板では
アーチ式部分のデータしか見られなかったんです。
詳しいデータの載っているパンフレットとかないでしょうか?」

すぐに資料館で配布されているパンフレットと別の
白いパンフレットが手渡されました。
一緒に放水写真も頂いてしまいました。

「ありがとうございますっ」
「あとひとつはなんですか?」

おぉ。なんて鋭い職員さんなんだろう。
ここで一番のお願い事をするのです。

「堤体を真下から見せて頂きたいんです。堤体下に繋がる
管理用道路に徒歩で入らせて頂けないでしょうか」

「真下ですか?」
「はいぃ。アーチの下から見上げたいんです。」
「天端からは御覧になりました?下は東電さんの施設になるんで
管理用道路に入るのは うちだけで許可が出せないんですよ。」
「え...」

アーチ式堤体の下の発電所前は東京電力の無人化施設との事で
東京電力に許可を取らないと入る事が出来ない区域だったのです。

愕然とする私の横に、お昼ご飯の終わった所長さんはじめ
職員の方々がお帰りになりました。対応してくださった職員の方が
所長さんに事情を説明してくださっています。

「前にも真下から写真撮りたいって方が来られましたよ。
その時は東電さんにここから電話して許可を貰って入ってもらったんです。」
「そ、そんなに大変だったらご迷惑かけるわけに行かないし結構です..。」

その間にも私の目は所内のあちこちに向けられています。
あ、かんじきスキーがある。
あ、このダム、ホロージェット隠し持ってる。

堤体真下からの写真は無理かなと思った時に所長さんが
若い職員の方に車のキーを渡しました。
「ちょっと見せて来てあげたらいい。うちの敷地からだったら別にかまわんし。」

若い職員の方が説明を下さいます。
「堤体から発電所までの間のスペースはこちらの管理なんですよ。
そこからだったら見てもらってかまわないんで..。」

狂喜乱舞の私です♪


水資源開発公団の車両はランクルが多いのかな♪
またしてもVIP扱いの幸運に恵まれました。
ランドクルーザーの助手席にお邪魔します。


天端の下に減勢工が無くて代わりに鎮座しているのが
東電の発電所です。


天端の中ほどにあるエレベーター室です。
なぜここまで車で送って貰えたかというと
前日に標高1200mの鉱山で3時間格闘していて
足を痛め、杖を突きながらの訪問だったからです。
どこまでも優しい公団の方々です。

あちこちで訪問して見せてもらったダムの事や
公団のダムはカッコ良いですねーとはしゃぐ
私の話を嫌な顔一つせず職員さんは聞きながら
案内してくださいました。


エレベーターを降りて監査廊に入ってすぐ断面図がありました。
真中に通っている黄色の線のうち左がエレベーター。
真中の細いのがプラムライン。右がなんと螺旋階段とあります。

堤体の中の長い長い螺旋階段.....。
素敵だろうなぁぁ。
登りたいけど足がこれではいけそうにありません。