鶴田ダム 見学 その1

2011/5/19 更新



そのダムはずっと行きたいと思っていたダムでした。


あの但し書き操作をニュースの映像で見た日から
ずっと会いたかったダムでした。


上空を旋回する新聞社のヘリコプター
左岸下流からカメラがダムを捕え
映し出されたのは非常用洪水吐中央2門から放流している姿
ヘリは天端を過ぎダム湖上流に移動
そこには
設計洪水位に達しているのではと思えるほどの濁水

ダムに繋がる三本の道は土砂崩れで寸断され
管理所は
発電所は
孤立していた

平成18年7月豪雨

3日前から降り続いた降雨で地面の雨水貯留キャパシティはとうになくなり
川にはすさまじい水が流れ込み続けていた。
それまでの降雨を上回る雨がやってきたために
洪水調節容量をすべて使い切った。

ダム湖の水位はサーチャージ水位に達し
クレストから放流していた。

必死の洪水調節が行われる中、土砂崩れが管理所を孤立させ
管理所自体のライフラインが途絶した。

通信回線も切断されマイクロ回線だけでデータをやり取りせざるを得ない極限の戦線。

それでも
下流の為に
洪水から逃げる時間を確保するために
非常用電源を使ってのゲート操作は続き
万策尽きはてたと思われてなお
但し書き操作において
絶対に流入量を上回る放流をしなかった。

神業といえる洪水調節を行ったにも関わらず
直後の民放TVの報道はダムが放流したために洪水が起きたと捕えられかねない偏向したものでした。

国土交通省 九州地方整備局 鶴田ダム

それは自分にとってひとつの聖地
絶対にいつか会いに行くと心に決めていたダムだったのです。



志布志港から桜島フェリーで鹿児島市街に入り土砂降りの中、磯庭園を見て
カーナビに任せてここまでたどり着きました。
管理所にアポを取っている時間まであと少しです。


県道には手作りの楽しい看板がいくつもあるんですがゆっくり撮っている時間がない。
車の中からフロントガラス越しに手抜き撮影。


ワインディングを登って視界が開けました。
左岸の天端横です。


左岸にはケーブルクレーンの台座跡と思しき一段高い部分があり
そこには慰霊碑がありました。


慰霊碑に手を合わせた後、そろそろと後ろを見ます。

鶴田に着いたよ
鶴田に来たんだよ

目を上げるのが怖いくらいです。
その姿を見たら泣いてしまうのがわかっているからです。


曇り空の下
ずっと会いたかった鶴田ダムは緑に包まれていました。