裾花ダム 見学 その4


おはようの顔を見せてくれているのが嬉しくて
しばらくここで堤体を愛でていました。

本当に良い立地です。
アーチダムが立つのにこんなにぴったりの谷はなかなかないぞというくらい。
その完璧な納まりっぷりを見ていると嬉しくなります。

◆ ◆

管理所に伺ってダムカードをいただきました。

その際にいろいろ質問をしたところ
所内に展示してある資料を閲覧させてもらえました。


こちらが工事中のダムの写真です。


素晴らしいV字谷ですね。
アーチダムが立つことを許された選ばれし場所。


試験湛水の後のクレストゲート放流の様子です。
越流部の張り出しはそんなになくて
コンパクトにこじんまりした設計なのに
こんなにきれいに水が前に飛んでいます。
ドームアーチならでは♪


堤体がほぼ出来上がって後は上部工だけという状態で
上流側から俯瞰して撮った写真。
発電用取水口や下流の湯の瀬調整池ダムにその間にある発電所管理所と
全部一枚に収まっていて位置関係が分かりやすい。

◆ ◆


これが裾花ダム建設のきっかけになった
昭和24年の裾花川洪水の新聞記事です。

長野県全域で豪雨がすさまじかったということですが
裾花川で堤防が二か所決壊したことで大被害が出たそうです。

裾花ダムができたことで直下流の長野市街の治水安全度は格段に上がりました。
しかし、その後も豪雨は何度もやってきます。


こちらは大変な被害が出た平成7年7月の前線性降雨の際の写真です。

黒部川で大出水があって黒部川第二発電所が浸水して
猫又堰堤が土砂に埋没してしまったあの七夕豪雨を含め
この年の6月末から7月中旬までという長い期間
降り続いた前線性降雨は各地に大変な被害をもたらしました。

信越地方では特に被害が大きかったのです。

気象庁のHPでも紹介されています。
平成7年6月30日〜7月22日梅雨前線


この豪雨で裾花ダムは
ダム湖を覆い尽くす大量の流木を補足しました。
コンジットゲートからの放流は土色です。


平成7年7月梅雨前線の時の写真です。
下流の様子を記録した写真も一緒に並べられています。


濁流が川岸を削りとっている現場写真です。
道路は浸水寸前のところを土嚢積みで守られ、なんとか耐えています。


奥裾花ダムと裾花ダムが頑張り長野市街はギリギリのところで守られたのです。

ダム便覧にもテーマページで紹介されています。
「あなたの街はこうして守られた」
平成7年7月豪雨時のハイドログラフも掲載されていますので
興味のある方は読み説いてほしいと思います。

この災害の後に
わずか6年後に
ダムによる治水を全く理解していない知事が
ダム建設を否定する政策で長野県に誕生したのです。
知事職を退いた後も各地のダム建設地でダム反対を訴えに回っていました。

それを思うと
これだけ頑張っている裾花ダムが不憫で仕方がありません。

◆ ◆

そして過去に経験した豪雨はもう二度と来ないものなどではなく
同規模の雨は今後も降る
さらにそれを上回る降雨も来るものなのです。


これは管理所で近年の豪雨について伺った際に
教えて頂いた昨年8月の突然やってきた集中豪雨です。

教えていただいた日時を国土交通省の水文水質データベースで調べました。

裾花ダムから真西に約12km離れた鬼無里地点の観測所と
裾花ダムから北に約5km離れた飯綱地点の観測所の雨量データです。


飯綱地点の雨量をグラフで表した物です。
短い時間にとんでもない雨が降ったことが分かりやすいです。


鬼無里地点ではなんと66mm/hという雨量が観測されました。

ピンポイントではなくそれなりの範囲に
これだけの雨が降ったのです。


こちらは長野県 河川砂防情報ステーションで検索したこの豪雨時の裾花ダムのグラフです。


このとんでもない雨で裾花ダムには急激な水位上昇が起きました。

8/11の
19:00から20:00、EL542.20mから一気にEL545.54m!!!
20:00から21:00、EL545.54mから一気にEL550.05m!!!

1時間に3m、5mの水位上昇って…阿鼻叫喚の数値。
福井豪雨のときの真名川ダムを思い出す数値。

でも本則操作。
そんなとんでもない雨が来た時でもステップできっちり
少しずつ放流してじりじり追いつく。


ちっちゃく表示されるハイドログラフ拡大。
これだけの豪雨でも本則操作で、常用洪水吐からの放流だけで洪水調節を完了しました。


堤体に日が当る時間もとても限られている深い谷で
凛々しい姿を見せている裾花ダム。

その姿は本当にドームアーチの教科書的ビジュアル。

あまりにも暴力的な美しさにノックアウトされてしまう天ヶ瀬ダム(京都)や
国内最後のドームアーチ、旭ダムのような鋭さはありませんが
とても真面目でとても真っ直ぐなしっかり者という印象です。

堤体が日陰になる時間が長くても
そのお仕事は称えられ日向で評価されるのが相応しいのです。

突然の訪問にもとても丁寧な説明を対応をくださった
裾花ダム管理所の皆様にお礼を申し上げます。

裾花ダムは素敵なドームアーチでしたーっ♪♪