志津見ダム 見学 その1

2011/4/19 更新

2010年の4月初旬。
お世話になっている川崎秀明先生からメールをいただきました。

『試験湛水中の志津見ダムですが
12〜2月の降水量が少なく、現在もサーチャージ水位よりかなり低く
4月までの試験湛水の終了はあきらめ
本年10月以降に持ち越すことになったようです』

という内容でした。

ああああ
やっぱり今年は無理かー
来年の出水期前が狙い目だな〜

各地のダムマニアが狙っていた志津見ダムの試験湛水・サーチャージ水位達成。

何故かというと理由は志津見ダムのデザインにあります。
クレスト部にゲートを配さず天端をそのまま越流させるというデザインは
取水堰堤等のローダム(15m以下)ではよくあります。
ハイダム(15m以上)でもありますが大抵は全面越流といっても
天端横に取水設備があったり排砂ゲートがあったりします。

志津見ダムにはそういったものは全くありません。
完璧なすっきり天端なのです。

しかも志津見ダムは堤高が85.5mという桁違いの大きさ。
このクラスで天端全面越流というのは世界的にも稀だとか。

世界初のデザインなのかな♪と、はしゃいでおりましたら
ダムサイトの萩原様曰く、
「英国に同じ天端全面越流で堤高72mのダムがあるんですよ」
とのお言葉。
これは志津見ダムのデザイナーの方にコンセプトをお聞きしてみたいので
その辺りは萩原様に期待して投げてみる。

とにかく2010年の春はというと
志津見ダムのサーチャージが延期になったという事で
狙っていたマニアにはへなへなになっていた時期でもありました。

◆ ◆

2011年。
新年明けていきなり豪雪
志津見ダムは順調に水位上げているんだろうか
と、思って川の防災情報のダム水位を見ると良い感じでした。

なんといってもゲートレスで自然越流のダムですから
いつサーチャージに達するかは流入次第。
何日に越流しますと発表できないのは苫田ダムと同じです。

いきなり
“水位が上がってきましたので明日行います”
という感じでぎりぎりにプレス発表があるというパターンだとは思ったのですが
それではどうにもこうにも身動きがとれないので
管理所や工事事務所に電話してメールして
予想で結構ですから教えてくださいとしつこいくらい連絡をとり
お聞きして回ったところ3/30午後から3/31午前という予測が出ました。

予想日が出たところで次にカメラマン確保。
当日行ける人はいないかと周囲に聞きます。
しかし年度末も末の上、震災直後で関西でも仕事が大変な事になっている人が多く
行けるよと言ってくれる人もなかなかいません。

とりあえず自分はギリギリになるけど3/31に現地に入ろうと腹をくくり
30日仕事の後、仮眠を取っていたのですが

突然、メールが届きました。

「現地でーす」

誰だよ!!
仕事に行くつもりで家を出てそのままダムに来たのは。
着々と有給をとれるように仕事を片づけていつでも出撃できる準備していたのは。
凄すぎて吃驚した。

なんでも3/31に行くつもりで有給を申請しようとしていたけど
30日の朝7時、家を出た直後に川の防災情報で水位をチェックしたら
“全流入量 114.7m3/s”
“貯水率(利水)100.0% 貯水率(治水)100.0%”
という文字が目に飛び込んできて一瞬にして我を忘れたとか。

後で管理所でお聞きしたところ
この数値、計測機器の間違いだったらしい。
実際は10t/s程度の流入だったらしい。
しかし治水容量100%となるともうサーチャージ達成。
サーチャージ水位維持は達成から24時間。
我を失ったというのは分かります。

個人的にこの時点ですーっと肩の力が抜けました。
私が撮れなくても仲間が撮ってくれている。
私が行った時に越流がもう終わっていても記録として美しい写真がちゃんと残るなら安心。

基本的に自分の写真が下手なのを知っているので
誰かが撮ってくれていることの方が嬉しいのです。

という事で安心して仮眠をとり日付変更線を越える少し前に出撃しました。


中国道、米子道、山陰道とガンガン走ってR184に到着。


夜明け前。
標識に志津見ダムの文字が出てきました。


ちゃんと志津見ダムのデザインになってる・・・
と思ったけど微妙に違う。
志津見ダムのすっきり天端にはそんな飛び出したものはないよ。
なにそのエレベーター塔か取水設備のような物。

まぁ、天ケ瀬ダムや上田池のような上下逆のダムマークよりはよいですが。

やっくりと車を進めていくと山の向こうにほのかな明かりが見えてきました。

ライトアップは予定されていないらしいですよ、と耳にしていたので
おかしいな〜と思いつつ
下流の堤体直下に進む工事道路の分岐部で車を止めて
三脚担いで車を降り、志津見ダムの定点観測ポイントである橋の上に移動しようと
物凄い寒風吹きすさぶ中進んでいきます。


闇に浮かぶ志津見ダムがその姿を現しました。

えええええ
こ、これライトアップしてないって?
いや、確かにこの光源は・・
純粋に監視用のライトが全灯ついているから
十分ライトアップ状態だよ♪

真っ暗なダムサイトを想像していたので完全に予想外の美しい姿に度肝を抜かれました。
そしてこの距離でもわかる水流。
全面越流に間に合いました。


正面を狙える位置にくるとこんな感じに見えます。
監視照明、光量凄いです。
これは文句なしにライトアップと呼べる♪


そしてここが志津見ダムの定点観測ポイント。
付け替えられた道路の橋の上です。
減勢工と福ダムも全部見えるのがこのアングル。
管理所のナトリウム灯と堤体を照らす水銀灯がいい感じです♪
カッコいいなぁぁ。