西郷ダム改造工事現場見学 その1

2016/5/31 更新


2009年に見学させて頂いた西郷ダムです。
山須原ダムの一つ下流側のダムになります。

ずらりと並ぶローラーゲート。
そしてとてもオシャレなゲートピアをつなぐ管理橋の下部アーチ。
堤高は19.964m。堤頂長は84.54m。

耳川水系最古参のダムです。
昭和4年に竣工しました。


左岸側に河川維持流量、その他の供給で活躍するホロージェットバルブと魚道。
基本デザインは山須原ダムと同じです。


そして山須原ダムとこんなところがお揃い。
堤体のすぐ下流で急激に川幅が狭くなっているのです。
自然の減勢池状態。

いや、むしろここまで地形に恵まれていたら
無駄に下流側を掘削する事の方がおかしい。
天然の要害最強。
そもそもこの下流には大内原ダムがあるし
シリーズダムの強み。

◆ ◆


山須原ダムの改造工事現場を見学させて頂いた後に
移動してきました西郷ダム工事ヤード。
管理所の塀に頑丈な水密扉。

これもT0514災の後に設けられたものなのだそうです。
写真の右下の方に緑色のテープが見えるかと思います。
T0514災の時にはこの高さまで水が来たんだと教えて頂きました。


山須原ダムと西郷ダムで行われている改造工事は
ダムの通砂運用をする為のものです。

長年ダムとして仕事をしていると砂がたまってきます。
これが堆砂です。

堆砂が進むとどうなるかというとこんな感じになります。


ゲートレスで100年近く頑張っている例として関西電力様の草木ダム
大正7年竣工
今年で98歳の現役堤体。


ゲート付でも80年近く頑張っている例として同じく関西電力様の川迫ダム
昭和15年竣工
今年で76歳。当たり前のように現役。
発電用ダムの分類で重要なポイントに
発電形式と発電方式があります。

発電形式は落差をどうやって稼いでいるかの区分で
発電方式は水の取り込み方の区分です。

発電形式は ダム式 ダム水路式 水路式 で分けられ
発電方式は 流込み式 調整池式 貯水池式 で分けられます。


これは旧一ッ瀬資料館にあった図です。

堆砂が進んでも影響が少ないのは流込み式です。
上流から流れてくる水を規定量だけ取り込めたらよいので
堆砂が進んでも影響が少ないのです。

しかし調整池式になるとある程度貯水容量を確保しておかないと運用が困難になりますし
貯水池式ともなると堆砂は大問題です。

砂と流木はダムの敵。
あ、ゴミも。


ゲートを高いところから低い所に付け替えると
こんな風に洪水のたびに砂は流れて下流に供給されていき
貯水池にたまる砂の量は減少します。

洪水のたびに上流の崩壊地から生産されてくる土砂をきちんと流し
ダムの貯水容量を確保できる。
そしてダムができる前には河口まで供給されていた砂を
届けることができるようになります。

ダム群によって上流からの砂の供給が断たれ砂浜が減少してしまったという声に対し
養浜事業が進められている天竜川の事例もあります。

必要なお水はちゃんとためる。
電気も作れるし維持流量も安定供給できる。
それでもって貯水池の敵、堆砂はちゃんと流して健康な川づくりをすすめる。
これがダムの通砂運用。


上流の山須原ダムが大量の巨木流木を捕捉してくれたおかげ…
というわけでもないと思いますが西郷ダムの工事は着々進んでおります。

見学時にはもう仮締切の撤去が始まっていました。