番外編 琵琶湖疎水 疎水分線 扇ダム 其の肆


で、その橋を渡ってずずずっと横に移動していくと
もう一本水路があります。


カニ歩きしていると到着しました。
疏水事務所と夷川発電所の正門です。
関係者以外立ち入り禁止ですが今日はアポを取っているので
堂々と入る。

玄関まで来たところで職員の方に呼び止められました。
名前を告げるとすぐに中に通してもらえました。

「突然のお願いですみません」
「いえ、ただ、扇ダムというものはあるんですが
一般に言われるダムというものとは全く違うものなんで・・」
「自分が調べた範囲ではこれは水路の一部のように思うんですが」

と、図書館でコピーしてきた資料をお見せします。

「こちらでもお電話いただいてから調べたんですが
疏水分線の一部で特に注目されないものですし・・」

とりあえず今年初めに改訂したばかりの琵琶湖疏水の最新版パンフレットを頂きました。


パンフレットにも写真は無いですがちゃんと扇ダムの名前があります。

続いて広げて見せてくださった資料は大阪府立図書館にはなかった
「琵琶湖疏水の100年 全三刊」と疏水分線の青写真

「おぉ♪これは凄いっ。あ、これが扇ダムですね」
「そうです。ご覧のとおり水路が少し広くなっているだけのもので・・」
「ではこれは役割としては扇ダム放水路を含め、余水吐という事でしょうか。
文献では大雨で洪水が起きたので放水路を建設したとあったので」

「えーと・・すいません。ぼく、この分野は専門外なんです。
扇ダムも今までに2回くらいしか見たことがなくて・・。
詳しい者がもうすぐ会議が終わったらこちらにまいりますので」
「あ、はい。すみません。」
「他に写真がないか探してきますね」

と、応対してくださった方がさらに資料を探してくれていると
会議が終わった専門の方が来てくださいました。
と、同時に最初に応対してくださった方が古い写真帳を
持ってきてくださったのですがその中に一枚、扇ダムの写真というのがあったのです!

「えーと、扇ダムについてのご質問ですね」
「はい。ダムと名前はついていますが堤体もないしこれはどんな役割をもったものかと」
「扇ダムの役割は遊水池ですね」
「! なるほどっ!」
「名前の由来は扇の形をしているから扇ダムになったと言われています。」
「そーなんですかぁ!」

実に明快に答えをくださる職員の方に感動しました。

疏水分線の水は扇ダムと第六隧道を経て松ヶ崎浄水場取水地へ暗渠で到達します。

水路閣→第五隧道→扇ダム→第六隧道→松ヶ崎上水場取水池と水が流れるわけですが
水路に必要量以上の水が流れてきた時にその分をオーバーフローさせ
扇ダム(遊水池)に流出→扇ダム放水路という経路でパスさせます。

また、扇ダムから周囲の寺社・庭園の滝や池の水に防火用水という目的で提供される容量もあり
それで取られる以外の水は扇ダム放水路を通って疏水記念館の横まで流れていくのです。

扇ダムの写真や青写真の図面の撮影・コピーはもちろん許可が出なかったので
現場でスケッチをさせてもらいました。


持って行ったコピーの裏にボールペンでスケッチ。
上から見たところです。
鉄管の前後に除塵スクリーンとフロー用の開口部があるらしいです。
遊水池の深さは教えていただきましたが長さが不明です。

扇ダムの写真は建設当初の物がwebで確認できました。
京都府立総合資料館所蔵資料データベースの琵琶湖疏水工事写真帖の中に
公開されている写真の一枚が扇ダムなのです。
『第6トンネル南口か』というタイトルの写真が扇ダム(遊水池)です。
現在とかなり様子は違いますが形は変わっていません。