乙原ダム 見学 その5

ゆるやかな曲線を描く堤体と昭和60年に改修された溢水堤です。
元々の河川は取水塔のあるあたりの谷底を流れていたので
今、貯水池の横にある分水路は付け替えられた河道となります。

溢水堤はただ、分水路とダム湖を隔てる役割を担っているわけではなく
その名前の通り異常洪水時には非常用洪水吐として機能します。
「この分水路と貯水池の間の溢水堤は天端より低いですから
貯水池の水位が上昇すれば必然的に水は分水路の方に流れだします。
なので超過洪水でも堤体を越流しないように
今で言うところの非常用洪水吐の役目ももっているでしょう」
という内容のコメントを、京都大学の角先生から頂くことができまして確定っ♪

そして昭和60年の改修工事で一番大事なポイントはここ。
堤体の端っこにオリフィスを設けたのです。
これで上流のバルブからお水をどんどん取り込んで
必要分だけ貯めて、一定水位を保ちつつ
超過分は速やかに川に戻す仕組み。
乙原ダムの分水路型排砂バイパスの仕組みまとめ♪
上流からまず砂除堰でお水を選別
貯水池は満水になれば余剰分はオリフィスから溢水路(余水吐)へ
分水路の水はそのまま溢水路(余水吐)へ
濁水が来ると予想される時は砂除堰のバルブを閉めて貯水池内に砂が来ないようにブロック
オリフィスが設けられているので定められた貯水位より上昇すれば自然に出ていく仕組み
もし、万が一大雨で貯水位が物凄く上昇することがあっても堰堤は越えないように
溢水堤の方が低く造られているので堤体の安全は確保されている
すっごく考え抜かれた仕組み♪
可愛い取水塔
働くオリフィス
溢水路(余水吐)へ進む水

大正時代にこんな先進的な仕組みが採用された乙原ダム。
何故こんな優れた仕組みがその後、造られたダムには採用されなかったのか。
それは巨大なダム湖を形成できる堤高が何十mもあるダムを造る技術が
どんどん進んでいったからでしょう。
ダム湖が大きくなるに従い、堆砂で貯水量が減るという
しごく当たり前のことは理解されていたはずなのに
それを微々たるものと捉え堆砂する量を見越して設計し、造れば良いという考え。
わざわざバイパス水路など作るのはコストがかかるし不要と考えられたからでしょう。
そして今、ダム湖への堆砂は貯水容量を圧迫し
深刻な問題となっているダムも現れはじめています。

乙原ダムの小さな小さな貯水池。
小さな貯水池だから
この容量を大事に大事に使いたいから
砂が入ることのないように
いつまでもお水をしっかり湛えられるように
大きなダムが進まなかった道を
乙原ダムは100年も前に選んで進んできました。
再開発で排砂バイパストンネルをつけたダム達
再開発で通砂運用が可能になったダム達
本格的な排砂ゲートを有し運用の実績を上げているダム達
そして
100年前から排砂バイパストンネルを持っていた
神戸市水道局の布引五本松ダム烏原・立ヶ畑ダム、武庫離宮・天皇の池
そしてバイパス水路を持っていた乙原ダム
100年経っても働くために備わったシステムを大切にしてきました。
日本のダム史に残る素晴らしい排砂システムを生で見られて幸せです♪
管理しておられる別府市水道局 朝見浄水場の皆様のおかげで
大変貴重な見学をさせて頂き勉強することができました。
ありがとうございました。
おまけ

溢水堤の端の砂除堰と接続するところには水神様の祠もありました。
苔むしがとても良い♪