ダム工学会中部近畿ブロック with Dam☆Night2022
関西電力 奥多々良木発電所 公式見学 その4

ゲート部を見るとこんなに水位が高くなっていましたが
ご説明をくださった操作にかかわる方曰く、1.5mくらいもう下がり始めているとの事。
発電所見学中に4号機が運転開始したので
この見学時に5号機と合わせて2台が運転していました。

本当の満水はこのくらいの水位なんだそうです。
怖い怖い怖い。
ゲートの上端からわずか下まで水が来ています。

黒川ダムも多々良木ダムと同じく天端は時間制限付きで
昼間は人だけ入れるように開放されています。
バイクの進入が絶えなかったようで進入禁止がしっかり明記されていました。

立ち並ぶ車止め。
ゲートが開いている時間、人は入れますので。

黒川ダムの洪水吐ゲートは1門です。

可愛いハンドルの付いた細い管があったので質問したところ
なんとこれは下流の灌漑用の水を供給するために設けられたものでした。

この説明板にもありますが多々良木ダムと黒川ダムは別の水系の川に設けられています。
上池の黒川ダムは市川水系市川
下池の多々良木ダムは円山川水系多々良木川にあります。

こちらは昔、見学に訪れた時に頂いた多々良木ダムと黒川ダムのダムカードです。
※現在はCOVID-19対応でダムカードの配布は中止しています
多々良木ダムは右肩に「P」の発電を示す文字だけですが
黒川ダムでは「WIP」になっていて水道用水・工業用水・発電と
三つのお仕事を持っていることがわかります。
揚水発電を行う電力会社管理ダムですが
そこに貯められた水は必ずしも発電だけに使われるわけではありません。
発電に使われる水は水車を回すだけで消費されませんので
その後、水田や水道などで消費される水になるのはよくあることなのです。
巨大な貯水池を持つ発電ダムの多くは実際は灌漑用水、水道用水、都市用水などの
供給にも関わっているのですが、控え目にそれらを供給していることを
ダムカードに示しておられないこともあるので、もっとPRされたらよいのに…
と思う事もしばしば。

黒川ダムのリップラップです。
こちらも多々良木ダムほどではないですがかなりの急勾配です。

貯水池側は1:2.5ですが、下流側は1:1.85とかなり立っていました。

天端には貯水池側に巨石が並んでいます。
その巨石を繋いでいるのがすごく重たい鎖です。
「これは5・6号機の増設工事の時に、貯水池に設置していた網場を
係留していた鎖を流用したものなんです」
「なんと!ただの飾りではなく建設工事で活躍したものだったんですか!」
「はい。ただ、重すぎて…」
「重すぎて」
「岩が割れてしまったところが…」
「!」

天端を進んでいくと巨大な鎖が外れて普通の鎖になっているところがあります。

「これが鎖が重すぎて割れちゃった岩ですね」
「ちゃんとクラック計測されてますねwww」
「クラックが進行しないようにワイヤー架けられてますね」

建設資材を有効活用した素敵な事例でしたが
岩が負けるとは残念。

「そういえば、昔、風力発電用の風車ありましたよね」
「はい。もう撤去してしまいました」
これが在りし日の黒川ダムにあった風力発電用風車です。
観光客にも人気スポットでした。
2018年に来たときにはすでに撤去されてなくなっていました。
まだ直下のグラウンドもできたて感が漂っていた頃です。

今ではすっかり緑の芝生で植えられていた木も育っています。

洪水吐直下に流れているお水に加えて
水路の少し先と途中に水が出ているところがあります。
河川維持流量なのかなと思ってお聞きしましたら
“自流放流”水なのだそうです。
下流側に出ているのがダム周囲の沢から出てくる水と堤体からの水。
真ん中に出ているのが自流放流水だそうです。
最近の揚水発電の上池では集水域の山から流れてくる水を
貯水池に入れないようにわざわざ貯水池を一周する形で
水回し水路を設けている場合もありますが
シンプルに、降った雨から計算して貯水池の運用水と別の分として
下流に流せば同じになります。
黒川ダムの洪水吐直下にはこんなトンネル水路があって
供給している水道用水や工業用水はここからの放流で確保されています。

天端から見下ろした直下の風景です。
日本一の揚水発電所としてずっと頑張っている奥多々良木発電所。
太陽光発電の普及に伴って不安定電源の調整弁としても
揚水発電の仕事は増える一方です。
でも
その仕事は
高品質の電気を供給するという仕事は
電力会社にとって収益にはならないのです。
あくまでも発電が収益になるので
ポンプアップはお金を生み出さないのです。
これだけお仕事がんばっているのに
これだけ社会の安全弁として
都市を支えられるだけの電気を生み出せる蓄電池としても機能しているのに。
それが哀しいので
一人でも多くの人に揚水発電について知識を持ってほしいなと思って
もちろん、自分の勉強も兼ねて取材させてもらいました。
関西電力 朝来水力センターの皆様、ありがとうございました。