奥里ダム 見学 その1

2008/4/15 更新

2008年4月になり、財団法人 日本ダム協会 様の『ダム便覧』が新しくなりました。

圧倒的に数が多いアースと重力式については数の変動に鈍感な自分ですが
希少な型式のダムについてはチェックをしています。
国内に6基しかないバットレスや
13基しかない中空重力式が増えたり減ったりしていたら
大問題なのでありえないと思っていますが
微妙な型式が一つあります。

重力式アーチです。

埼玉県の二瀬ダムはずっとアーチだと言われていましたが
ダムマニアの皆さんが現地で堤体を見たところ

これ・・・アーチ?重力式アーチじゃないの?

という疑問が湧き、ダム協会に調査して頂き、結果
重力式アーチに型式変更があったという経緯があります。

また重力式アーチによく似た曲線重力式というものもあります。

曲線重力式らしいけれどアーチ重力式と説明板に書いているダムもあれば
きっちりと曲線重力式と明記してくれているダムもありました。

曲線重力式か重力式アーチかの判別は素人が外見を見ただけでは不可能です。
自分も何度も混乱を経ていくつかの判別ポイントを
電力会社の方などに教えて頂きましたが外観で判断するのは困難との事。
設計時のデータが無いと判定はできないというのが結論でした。

そんな事もあって稀少型式である重力式アーチについては
こまめにチェックをしているのです。


◆ ◆

ダム便覧が2008年度版になり
まず開いたページは型式別の重力式アーチダムのリストでした。

黒部(栃木)と中岩と芋洗谷は無事に残っているかなぁ…
小原は認定されたかなぁ…
立ヶ畑はまず無理っぽいなぁ…

と、ページを開いて愕然としました。

阿武川
石徹白
芋洗谷
大鳥
奥里 
小原
新成羽川
高山
七色
二瀬
湯田
・・・・・・

何? この 奥里 って!

今まで聞いたことないダムがいきなり重力式アーチに入ってる!

しかも奈良県
でんぱつ様のダムやんかっ!!

黒部ダム(栃木)と中岩ダムの東電組がGA→Gに型式変更
小原ダムがG→GAに型式変更

微妙なあたりにいる曲線重力式ダムが型式変更になっていました。

しかしそれより突如現れた奥里ダムにとにかく吃驚してしまいました。

ただ、データがとても少ないようでどんな堤体なのかが
ダム便覧に寄せられている情報だけでははっきりしません。
現在調査中との事だったので自分も現地調査と出かけてきました。



奈良県の十津川村にある電源開発の風屋ダムと同じ1960年に竣工しているらしい奥里ダム。

風屋ダム下流で合流している滝川(芦廼瀬川)の上流から風屋ダムに
水を送るために取水ダムとして設けられているのが奥里ダムであるというのは
地図に書き込まれている水路から読み取れました。

ただ、堤高20m、堤頂長80m級の堤体が地図にはっきり書かれていないというのも
なんだか不思議な気がしました。

お花見行楽渋滞が予測されたので日が昇る前に十津川村に入ろうと出かけました。

猿谷ダムを過ぎて大規模崩落で国道が寸断されまくるR168に新しくつけられたトンネルを通り
風屋ダムを過ぎてやってきました滝川地区。


県道を走っていると突然現れた水圧鉄管に吃驚して停車しました。


なんとバス停の名前が『導水路前』

だ、誰が乗降するの?
このあたりはバス停でなくてもどこでも乗りたい人が手を上げて
バスに乗れる自由乗降エリアだけど。
ここは集落の間なんだけど。


どーんと設置されている水圧鉄管。


なんとこの水圧鉄管はサイフォンで川を渡り対岸の山を登っていました!!
細いですが見ごたえのある水圧鉄管です。


水圧鉄管に付けてあった銘板。
「芦廼瀬発電所 滝川水路管」

昭和35年製ですから1960年。
風屋ダムと奥里ダムと同い年。
というか同時に造られた設備。


フェンス横の立看板。

上流の取水ダム…
奥里ダムの事でしょう。